あたしは眩暈がして はっきりいって立ってるのがやっとだった。 そりゃ、あんたの直向さとか、純粋さとか・・・ 数え上げればキリがないくらい良いところを知ってるつもりだけど こればっかりはどんなプラス思考も恋は盲目という言葉もついていかないよ 「アスラン・・・あんたってさ・・・変でしょ」 やっと搾り出した言葉はそれだった この日はちょっとドックに用事があって早めに部屋を出て 思ったより用事が早く済んだからアスランでも誘ってご飯でも食べに行こうかと彼の部屋に向かった ちょうどニコルとディアッカに角で会って 「やっほぅ、ニコル」 「じゃないですか!こんにちわ!」 8時間ぶりの同僚と手を取りはしゃいでいたら 「・・・おいおい、俺はスルーかよ」 もう一人の同僚が眉を顰めたので 「違うってディアッカ〜。隣におかっぱ女王様いないからさ〜変な感じで」 「あのさぁ・・・俺、別にイザークのお守りじゃないんだぜ?」 機嫌を取ろうとしたらさらに状況を悪化させてしまったらしい でも、ディアッカは相方と違って本気じゃないから気が楽でいい 「で、イザークは?」 「いや、さっきそこでディアッカとばったり会ったんで、イザークは・・・ は何か用事でもあるんですか?」 探してきましょうか?と首を傾げるニコルにそういうわけじゃないんだけどね、と首を振る チラリとみたディアッカがばつの悪そうに口を開いた 「まだ、寝てるよ」 「プッ・・・ほらね、ニコル。やっぱりディアッカに聞くのが一番早いんだよ」 ニコルと一緒にお腹を抱えて笑っていたらディアッカも諦めたように髪をクシャリと掻き揚げた 「で、お前は何処に行くんだよ?こっちは確か・・・」 「あ、うん。アスランでも誘ってご飯でもって・・・」 「ええ!!アスランの部屋に行くんですか?!」 ニコルが思いっきり声を上げる 何 か ま ず い ん か い ? 確かに皆で同じ艦になった時 それから、アスランが気になりはじめた頃 相談した(半ば強制的)ニコルやらどっからか湧いてきた金銀コンビにまでばれて (そういえば、それは”恋”だとおしつけられたなぁ・・・流されたよ) ここまできたけど 年頃の女の子が好きな男の子の部屋に行くのは・・・まぁ道徳的に問題があるにしろ 事あるごとにニコルとディアッカはさることながら 何故かこの間、イザークにまでアスランの部屋には行くなと止められました そりゃそろそろあたしも不信に思いますよ? 勝手にトリップしているとニコルとディアッカがこそこそ話をしていた 「あのさ・・・」 あたしが声をかけると二人はゆっくりと大きく頷きこっちを見る あんたら本当は仲がよいんじゃないの? 「じゃ、じゃあ、ぼぼぼぼ僕とディアッカは先に行ってますから!」 おいっ 「ああ、じゃあ、頑張れよ!」 おいおい 思いっきり怪しいんですけど!! 唖然とするあたしの横を二人はそそくさと通りずぎる 「・・・何なんだよ、あいつら」 ボソリと呟く 腑に落ちないあたしはそれでも離れていく後姿を見送った後アスランの部屋へ向かった コンコン 「はい」 ノックをしていざ入るとなると緊張してきた 「あたし、。入るよ?」 「え???ちょっ・・・」 あせるアスランの声を聞いて 入るよ、じゃなくはいってもいい?にすればよかったなんて気づいたのは 思いっきりドアが開いた後でした バンッガシャンッ 「ご・・・ごめん」 豪快な音を立てて紙が散らばった床にしりもちをついてるアスランの姿 ・・・見てはいけなかった エースパイロットの失態 もとい、あたしの好きな人の無様な姿 「あはは、どうしたの急に?」 こうなると苦笑いですらいとおしい 「ご飯でもどうかと思って、誘いに来たんだけど出直したほうがよさそうかな?」 「あ、いや。中でちょっと待っててくれるかな?すぐ片付けるから」 仕切りなおして立ち上がると手を引いて中に招いてくれた 繋いだ手から伝わる体温が余計緊張させる (顔赤くなってないかな・・・) 頬に手をやると熱い 「は僕の部屋だけ遊びに来てくれないから嫌われてるのかと思ったよ」 むしろ逆です。好きなんですよ アスランは話しながら淡々と机から落ちた書類を集める 少し余裕ができたあたしはゆっくりと部屋を見渡す 少し殺伐とした部屋の中の一角にやけにカラフルな場所が目を引く 「・・・写真?」 「・・・あ、うん」 最後の書類を机の上に戻したアスランが写真のほうに目をやり小さく頷く 写真の方に近づいたあたしは胸に小さな痛みを感じた (・・・これがラクスさん) 写真の中でアスランの隣で優雅に微笑む少女は可愛らしくて非の付け所がなかった 当のアスランも少しほほを染めて微笑んでいる (勝てねーよ) 突きつけられる現実にちょっと泣きそうになった 皆、これに気を使ってくれたのかな・・・案外いい奴等だったのかも・・・ ずずっと垂れてきそうな鼻水をすすると今度は硬直した なんだこりゃ!! きっとアスランの部屋でなければ確実に叫んでいただろう 狭いスペースの中でひときわ目立つ茶色い紙のしょ・・・少年(?) しかも、たくさん 写真の子の目線はこちらに向いているのとないのと まさに盗撮のようなのまであった 「この子は?」 指した指が震える 「しらないっけ?幼馴染のキラだよ」 気のせいだ 気のせいだ文末にVvマークはなかった 頬を染めてにっこりと笑うアスランの笑顔に疑惑を覚える 「ほ、本当に好きなんだね」 「うん、大切な友達だよ」 「あのさ、盗撮っぽいのあるんだけど」 「よく撮れてるよね、幼年学校時代の時に買ったんだ」 「(買った???)そ、そうなんだ・・・」 ちょっと、待って・・・ 「キラってさ、本当におっちょこちょいでねそれでいて・・・」 その先のアスランのキラ話なんか頭に入るわけなかった 頭の中で整理をしようとする でも考えれば考えるほどこんがらがって・・・・ あいつらが止めようとしたのはこっちのほうか? 「どうしたの?」 肩に置かれた手と耳元でいわれた言葉で我に返る アスランのほうをやっとのことで見たあたしは真剣な眼差しで 「アスラン・・・あんたってさ・・・変でしょ」 と、言うのが精一杯だった その後は何だかショックを受けた顔のアスランが何かを言っていたような気がするが あたしは真っ白な灰になっていた 次に意識がはっきりしたのは いつの間にか食堂にいた自分が万遍の笑みでニコルに 「、おめでとうございます」 と言われた時だった 「なんでやねん」 と力なくベタなつっこみをするぐらいしか出来なくて 更にニヤニヤするディアッカと寝起きで不機嫌そうなイザークと あたしと目が合って気恥ずかしそうに笑うアスランがいて あたしは首を傾げるしかなかった 後日、あたしが真っ白になっている時に 誤解されたと思ったアスランから「愛の告白」があったと知ったのは次の日のことで 更にあたしが部屋に行ったときにすごい音を立ててあわてて閉めた引き出しには 「幼馴染」のキラより多くのあたしの写真を見つけたのは あたしがアスランの部屋を掃除したりするような間柄になってからだった |