「なんだか最近ため息多いな、アスラン」 そう声をかけてきたのは同室のラスティだった その手 「そうかな?」 ドライバーを握りながらベッドで横になっている同僚に顔を向けた 「さっきので部屋に帰ってきてから19回目」 「はは」 まさか数えているとは思わず俺は苦笑いを浮かべる 「何かお悩みなのかな?エースパイロット殿は?」 「まさか、悩みなんてないよ」 「ふーん、ならいいけどさぁ」 ラスティが明らかに含みを持った笑みを浮かべた 悩みか あるとすれば・・・ 「あ、。コレよかったら」 「え?あ・・・い、いらない!!」 「はぁ・・・」 「ほら、また。20回目」 「なっ!」 さすがにその言葉に自覚がでて俺は顔が赤くなるのが分かった ラスティはにやにやと笑っている 「エースパイロットも難しいプログラムは解読できても恋の悩みはお手上げってか?」 「へえぇ?」 あからさまにそれが図星というわけではないが怪しまれそうな間抜けな返事をしてしまった 「ずいぶん思いっきり叩かれてたじゃん、手」 右手を上げてひらひらとさせた 「見てたのかラスティ?!」 俺は思わず立ち上がってしまった 「たまたま休憩に行ったら・・・な」 「ど、どこから」 「アスランがドリンクをキャッチし損ねたところから」 それじゃあ、ほとんど最初からじゃないか・・・ 「ちなみにミゲルとオロールとかも一緒に」 血の気が引くというのはこういうことを言うのか 明日には何かいやな噂が広がってるかもしれない 「まぁまぁ元気出せよ」 立ち上がったラスティが 「まどろっこしい事しないでストレートにやってみれば?」 と俺の肩をたたいた それができれば苦労はしない だいたいなんて伝えれば・・・ 好きだ、といったところではあたしもといって友情を確かめてくるだろう 顔に出てたのかラスティが声を上げて笑った 「あはは、そう考えるなよ。俺、休憩終わりだからもう行くな!」 ドアを開けて廊下に出た 考えずにはいられないよ、まったく・・・ ハロの部品に手を伸ばした 「おい、アスラン!」 行ったはずのラスティが半身を乗り出して 「待ち人来たるだ」 ウィンクを投げた 「どうしたのさ、 僕のベッドに座っているのはだった さきほどラスティに背中を押されてドアから見えた姿に正直動揺した 「、なんかアスランに話しあるみたいだぜ」 「あ、休憩中なのにごめんね」 僕はいいよ、というとの手を引こうとする が、その手は引っ込められてしまった 少しショックを受けた しょうがなく手で自分のベッドを指し、座っててとを中に招いた 先にだけ奥に通すとドア口でラスティが耳打ちをしてくる 「よかったじゃん、アスラン!女はムードに弱いからな、頑張れよ」 「え?」 「じゃな!」 「ラ、ラスティ!!」 そして、今に至るわけなのだが 今、酷く緊張している 「あのさ、アスランこれ」 が差出したのはさっき差し出して拒まれたもの ハンドクリーム 「さっきはごめんなさい」 「別に気にしてないよ、僕のほうこそごめん」 「え?なんでアスランが謝るの?」 「だって、が怒るなんて思わなかったから、僕が嫌な事しちゃったみたいだし・・・」 申し訳なくて嫌われたくなくて僕はどんどんの顔を見れなくなっていった 「違うの!!」 から思わず上げられた声に驚いて顔を上げる 「ほ、本当は嬉しかったんだけど・・・」 嬉しかった? 「嬉しかったんだけど・・・これを持ってるアスランの手が」 僕の手が? 「あまりにも綺麗だったから・・・その・・・し、嫉妬したの!!」 は真っ赤になって俯いてしまった 「嫉妬?」 黙って頷いた 「あたし、アスランからプレゼントもらえるって勝手に舞い上がっていたの でも、同情なのかなって思っちゃったら、なんか悲しくて、ね」 「ちが・・・」 「しょうがないよね、こんな酷い手だし」 は手の平を正面にひらひらとさせた 悲しそうに笑うその姿に胸が痛んだ 「ごめん、僕の言葉が足りなかったみたい・・・」 俺はの前にしゃがんで俯いたの顔を覗き込んだ 「本当に同情とかじゃないんだ」 の手をとるとびくりと体が強張った 「コーディネーターって生まれ持った身体能力や頭脳で努力なんてものとは無縁の存在なのに は違った 女の子なのにザフトで軍人としてトップガンであり続けるために頑張ってきた は弱音とか自負とか何にも言わないけど君が頑張ってきた証はここにあるんだ でもね、僕はが心配だからちょっとは気を抜いたり休んでほしかった だって、休憩中ですらよほどのことがない限りドックで手伝いとかしてるんだもん」 僕はへへと笑いも少し顔を上げて微笑んだ 徐々にの手から力が抜けていって僕の手にしっかりと合わさる その温もりがまた嬉しかった 重ねられたその手は今まで自分が見てきたどのものより惹きつけられた 「僕はの手、好きだよ」 の手の平は豆だらけで硬くなっていて 荒れてカサカサだったけど その手の平から溢れるほどの優しさに満ちていた それが酷くいとおしくて 平と甲にキスを落とす 「ちょ!あ、アスラン!!」 ちらりと視線を上げるとは真っ赤なって慌てて振りほどこうとしたけど 俺はしっかりと握ってまたまたキスをした 「俺、この手もも全部好きなんだ」 あんなにどう伝えようか悩んでいた言葉は内心、自分でも驚くほど自然に出てきた 少し照れくさかったけどがどんな顔をしてるか見たくて今度はしっかりと顔を上げる 俺は少しだけ期待をしていたロマンチックな雰囲気なんてどこにもなかった 視界に広がるのは 今にも吹き出しそうなのを必死で我慢して破顔しているの顔だった 「・・・?」 少しむっとした俺は 「あははは。だって、だってアスランが「俺」っていうんだもん」 「え?」 「俺っていうからさ、なんか可笑しくて・・・」 「僕だって俺っていったりするよ、そんなに笑わなくてもいいじゃないか」 ついうっかり素で俺といってしまったことを後悔した 俺はむっとして顔を背ける 今度はが覗き込んできた 「ありがとう、あたしもアスランが好きだよ」 その笑顔にどきりとしたけど やっぱり友情の確認じゃないか あっさり言われて肩を落とした 「嬉しいな、片思いじゃなくてよかった」 「え?」 その言葉に驚いて振り返った 「両思いでしょ?」 その時の僕はきっと間抜けな顔をしていたと思う でも、そんなのも関係なく必死で首を縦に振った その手を握ったまま |