くしゃくしゃになってゴミ箱に放り込まれている大量の煙草の箱と 部屋のあちこ ちに置いてあるスプレーカンやガムの類に あたしはイザーク真っ青のしかめっ面をした 目の前の男は 「な、何怖い顔してんの?」 と自分のしでかしたことを理解しているのか苦笑いで聞いてくる あたしはむっとして 横になっていたあいつの腹に ブーツの踵を落としてやった ヘビースモーカーの舌 あたしの彼氏 ディアッカ・エルスマン ザフト軍のハイソなエリート兵の一人 そいでもってあたしはただの一般兵 一般的に言う身分違いの恋をしている 恥ずかしい話し恋に身分の差は関係ない なんて乙女のように思っているのだが こいつはぼっちゃんのくせして同僚の方々とは雰囲気からして全く違う 何て言うか、妙にすれてんのよ どんな荒波に揉まれたんだい君は? 思わず聞きたくなってしまう だからおかしいぐらい身分の差なんか気にしなくて済むのだ それよりもあたしがきにしてるのは… 「うぇっ」 体の中を込み上げてくる独特の感覚に身震いする 恋人達の一時はその声で台無しである 「さ、それは俺に失礼でしょ?」 「見て見て凄い鳥肌」 「聞いてねーし」 ディアッカはベッドの上であぐらをかきながら顔を背けた 「まあまあ、すねないでよ。あたしの話しでも聞いて下さいな」 「…人の話しも聞かないくせに調子よくない?」 横目でディアッカは催促した は気にせずディアッカのあぐらの上に倒れ込む 俗に言う膝枕というやつだ (こーゆーのって俺がしてもらうもんなんじゃないの?) むすっとしてそっぽを向きながらもディアッカはの髪を指を通したり絡めたりする 「あたしさ、猫の舌ってだいっ嫌いなんだ」 「話し進めてるしよ」 「だから、ここからが重要なんですよ」 「はいはい、どーぞ」 諦めたように口の端だけ上げて笑うと視線をに戻した は遠い目をしながら話し始める 「あのね、小さいときあたしかなり猫好き猫派だったんだけどね、 忌まわしいあのざらざら してた舌によって即、犬派にさせられたのよ。 もう猫を見るだけでも鳥肌立つぐ らい」 「ふーん」 「あんなに愛らしい容姿からあの舌!反則だと思わない?」 「ほ〜」 「だからディアッカも嫌い」 「はぁ?!」 それまで話し半分で聞いていたディアッカもいきなりの「大嫌い」発言に耳を疑 う 「嫌いって言ったの」 「猫の舌からどうして俺に結び付けられるわけ?」 「エリートなんだから分かるでしょ?」 しばしディアッカは空を見つめ黙って考える しかしどう考えてもその話から自分の非に結び付かない ふいに乾いてきた唇が気にになって唇を舐めた舌がざらりとする 「!!」 「ご名答」 ディアッカの表情を読んだのかは目の前で拍手をした 煙草を吸っている人は体内に入ったニコチンにより舌がざらつくのだ しかし、一度吸い出してしまった煙草というのは麻薬のようにやめにくい 大袈裟な話、その味にハマってしまったら最後なのだ しかしやっと理解したディアッカにはにっこりとまんべんの笑みで 「あたし猫の舌、すっごいトラウマなの」 と言って体を起こして立ち上がると追い討ちをかけた 言われたディアッカは真っ白になる この巧みなる舌技で酔いしれさせた女は数いれど、 その舌が嫌で別れようなんて女はが初めてだった 「ちょ、!」 立ち上がってからさっさと帰ろうとするの腕を掴んだ 振り返ったの瞳が真剣になる その瞳にディアッカはごくりと唾を飲み込んだ 「ディアッカはあたしの事好き?」 の声、瞳、仕草、全てが魔法のように逃げられない、 捕われてしまったよう な感覚になる 「好きだ」 嘘、偽りなくごく自然にその言葉がでた そのまま手を引いて強く抱き締める 実際、告白したのはからだったが 気付けば今では自分の方がこの全てにハマっているような気がした 「じゃあ…」 の意地悪そうな笑みが近付いてくる そして、ディアッカに触れるだけのキスをした 「この後は煙草やめたらね」 その笑顔と不意打ちに真っ赤になるディアッカが思わず腕を緩めてしまう はするりと腕を抜けると頑張ってね〜と手を振りながら出ていった その約束から一週間 は一週間ぶりにディアッカ(とイザーク)の部屋に来た (最近、たばこ臭くもなくなったし随分頑張ってくれてんだな〜あたしも我慢したかいがあったよ!) 一人で納得し頷く 「ディアッカ〜(とイザーク)入るよ!」 胸を踊らせてドアを開けるの期待は バスターの超高インパルス長射程狙撃ラ イフルで撃ち抜かれたように無惨にも砕け散った そこで冒頭に戻るわけだが 「おまっブーツのか・・・かとは・・・」 「あんたはどうしてやめようと努力しないでバレないように努力するわけ!?」 「い、いやぁ・・・だからさ、ゴホッ・・・聞いてくんない?」 「もう考えらんない!程々に愛想が尽きたわ!さよならよ、さ・よ・な・ら!! 」 「ま、待てよ!!いてて・・・一週間もに触れなかった俺の身にもなってみてよ!」 「ふざけんじゃないわよ、そんなんあたしだって一緒でしょ!」 「も一緒なら別れる必要ないじゃない!」 「あたしの尊い一週間とあんたの無駄な一週間を一緒にしないでよ!!」 この尽き無さそうな抗争も ディアッカが無理矢理重ねた一つのキスで片付いた その後はそれ以上たばこについて言わなくなったのは ディアッカがきちんと喫煙をしたのか がその舌にハマってしまったのか 定かではない |