くたくたにくたびれたディアッカと分かれたあと、意外な人物がの部屋の前 で待っていた 「イザーク!」 その声に気付いたイザークは何も言わずこちらを見ただけだった (機嫌いいの、悪いの、どっちなんだよ、あんたは…まぁ悪かったらディアッカに 引き渡そう) 半ば諦め気味でイザークに近付いていく 「どうし…」 「馬鹿が!貴様は何をうろうろしてるんだ!!」 開口一番怒鳴られた (…それはちょっとムカつくよ、ジュール君) は顔をしかめた 「…だ、だからそんな怪我でうろつかれたら邪魔だろうが!」 少し照れ臭そうにそっぽを向くと今度は吐き捨てるように言う (何だ、心配してくれてたんだ) イザークもやっぱり素直じゃないと思う まぁ、イザークが珍しく心配してくれたことだし はにんまりと笑う 気持ちが悪いとイザークに睨まれた 「おっちゃんから痛み止めもらったし、あたし回復早いから」 肩から下げた三角巾に乗っている腕を振り回す 「お前が怪我を負って帰投したときあいつらがどれだ騒いだと思っている! 五月蝿くて仕方がなかったんだぞ!!」 俺も心配したんだ そう言おうとした言葉が喉に詰まった 仲間思いの癖にもってでた性格が邪魔をする 「はいはい、気を付けますよ」 にやにやした顔ではは肩をすくめた 「貴様、何だその顔は!!本当に分かっているのか?!」 「いや〜イザークも心配してくれてるみたいだから嬉しいなって」 「なっ!!」 白いイザークの肌が少し染まった 「貴様、いいかげ・・・」 「・・・その後の動きはどうなわけ?」 急に真面目な顔になるにイザークもそこで怒りを止める 「足つきが傘に入った」 「傘?・・・ああ、アルテミスね。そうか、ちょっと厄介な感じじゃない?」 「だから2時間後に艦橋でブリーフィングをするらしい」 「まぁ、傘をどうするか話し合ってもしょうがない気がするけどね、実際何の解決にもならない」 「だが、このままみすみす足つきをのさばらせておく気はない!!」 ガン!と拳をぶつける 「そうだね、Xナンバーも手に入ったし、何かいい手を探そう」 「当たり前だ!!このままじゃ終わらん!!!」 二人は顔を合わせると大きく頷いた どうかこの声が 貴方に どうかこの声が 君に 届きますように 「傘はレーダーも実体弾も通さない。まぁ向こうからも同じ事だがな」 ブリーフィングには赤服のメンツと艦長のゼルマンが参加していた 実際作戦の指揮を取れるものの参加が多い よって、自ずと赤服のメンツに声が掛かるのだ たちは先ほどから戦略パネルの四方を囲っている 「簡単な話、内も外も跳ね返すって事ね」 は腕を組みながら首をかしげ、パネルを指で指す 「だから攻撃もしてこないって事?馬鹿みたいな話だよ」 「実際、それでこちらの攻撃を受けずに飄々とここにいるんだから馬鹿に出来ないわよ」 ディアッカはに否められると肩をすくめて眉を顰めた それにゼルマンもの意見に同意するように続ける 「そうだな、防御兵器としては一級品だぞ。 さして重要な拠点でもないため、わが軍も手出しせずにきたが・・・」 その後の言葉は言わなくても皆分かっていた 足つきが、残りの一体がそこにいるから イザークがぐっと手に力をこめる 正面にいたは大きくため息をついた 「・・・まぁ、どっちみち、あれもどうにかしないといけないのは現状だしね・・・」 「しかし、あの傘を突破する手立ては今のところない。厄介なところに入り込まれたな」 ひげの生えた顔を歪める 「じゃ、どうするの。出て来るまで待つ?」 ディアッカはお得意の皮肉をこめた笑みを浮かべると その顔が視界に入るイザークが厳しい視線を投げかげた 「ふざけるなよ、ディアッカ。お前は戻られたクルーゼ隊長に何も出来ませんでした、と報告したいのか?」 「くっ・・・」 ディアッカはその言葉に何も返すことが出来ず顔をそむけて舌打ちをする 「それこそいい恥さらしだ!!」 それこそ イザークは先の失敗の意味も含んだ話方をした 同じXナンバー一機を四機でかかって撃破すら出来なかったこと 言われたディアッカはおろか、周りにいた全員が言葉に詰まる は先ほどからずっと黙っているニコルに目をやった ニコルは酷く真剣な顔でパネルの上のアルテミスを見ている 「どうしたの、ニコル?」 「あ、ああ、すみません。考え事をしていて・・・ ゼルマン艦長、この傘は常に開いているわけではないんですよね?」 「ああ」 目をパネルに向けながらの唐突なニコルの質問にゼルマンは思わず肯定の返事しか出来なかった 「周囲に敵がいないときまでは展開していないってきいたわ。 でも、そこを狙って近付いていけばこっちが射程に入れる前に察知されちゃうからそれは無理に等しいわよ」 なら打つ手ないじゃん、との言葉にディアッカが両手を上げる またイザークに睨まれて肩を竦めた のその言葉を聞いてもまだニコルは顔をパネルに向けたままだ 「あ・・・そいうい正当法じゃなくて・・・僕の機体なら・・・」 「えーっと、ブリッツ?」 「そうです!あのブリッツなら上手くやれるかもしれません!!」 そういって初めてニコルは顔を上げる その顔は、新しいおもちゃを使うようなうきうきとした少年の顔になっていた 「オッケー、ニコル?」 最後のハッチを閉める前にパイロットスーツに着替えたが言葉をかける 「はい」 「じゃあ、閉めて。傘のリフレクターが破壊できたらすぐに出撃するから!頑張ってね!!」 「本当にも出げ・・・」 「え?何??」 言葉の途中で遮られてしまったが不思議そうに首をかしげるにそれ以上何もいえなかった 「・・・いえ、何でもありません。それじゃハッチ閉めます!」 ニコルが声を上げるとはハッチから離れる 「ミラージュコロイド電磁圧チェック。システムオールグリーン」 ハッチが閉まった後ニコルは最終確認に入る 「ふう、テストなしの一発勝負か・・・大丈夫かな?」 の前ではそんな素振りは見せられなかったが、新しいものを使うという楽しみもあるが、やはり共に不安もある (でも・・・) 傘のリフレクターが破壊できたらすぐに襲撃するから はそう言った カジカ医師に強力な痛み止めをもらったからといって、あの怪我でガイアを乗りこなせるはずがない (出来れば僕が一人でどうにかできたら・・・) ガモフのハッチが開き目の前に宇宙空間が広がる ニコルはそう思いながら発進していった あのあとニコルからブリッツについている特殊な隠蔽機構について聞かされた ミラージュコロイド 可視光線を歪めレーダー波を吸収するガス状物質を展開させそれを磁場で機体の周囲に引きつけることで ブリッツは完全に見えない存在になるという デッキにいるイザークは先ほどの説明を思い出し苦々しい顔をした 「・・・地球軍も姑息なものを造る」 考えれば考えるほど苛立ってくる あるはずのない地球軍とザフトの差を感じた 「本当、傘にしろあれにしろ、大したもんを造ってくれるよね。まぁニコルにはちょうどいいさ、臆病者にはね」 その言葉に反応するわけでもなくイザークの視線はガイアに移った 「ん?どうしたのさイザーク」 「いや、アイツは本当にあの怪我で戦場に出る気なのか?」 「あ〜でるんじゃないの?言い出したらやめないよ、あいつ」 「・・・くっ」 イザークは歯を食いしばるとデッキの窓ガラスを殴りつける (・・・まぁ、イザークの気持ちも分からんでもないけどね・・・) 「イザーク落ちつけって、とりあえず俺たちが守ってれば平気だろう?」 ディアッカが震えるイザークの肩に手をおくいた 「ニコル出撃したわよ、ガモフはこの近郊から離れるわ」 ドアが開いてが顔を見せる 「・・・何?またヒスってるのイザークは?」 ガラスに当てられたままの拳を見ては大きくため息をついた イザークは拳を下ろすとゆっくりとドアの前にいるの方へと振り返る 「お前は邪魔だから出るな!!」 「はぁ?何いってんの、あんた?」 不仕付けな質問には目を丸くする (・・・そうくるかよ、イザーク) イザークが振り返ったせいで死角になったディアッカはその行動にため息をついた 「そのまんま、言葉の通りだ!!いいか、来るな!邪魔だ!!」 すさまじい剣幕で怒鳴り散らすイザークにまったくは動じない それどころかところどころ首をかしげる 「冗談。ニコルがもう出撃してるのよ」 「だからなんだ!ナチュラルごとき俺たちだけで十分だ!!」 ヒートしそうな喧嘩だったがが思いのほか落ち着いているので 殴り合いになる心配はないだろうとディアッカは胸を撫で下ろした 「いいな!!」 「イザーク、悪いけどあたし、それは聞き入れられないからね ミゲルやラスティの時もヴェサリウスが攻撃された時もあたしは我慢してきたんだから」 真剣な表情にイザークは言葉を詰まらせた 一呼吸おいてまたが口を開く 「・・・あたしはもう壊されていくのを指を咥えて見てるだけなんて嫌なの」 (こりゃ、イザークも負けだわな) 「勝手にしろ!!」 そうはき捨ててイザークはデッキを後にする 閉まったドアを見つめながら 「どうしたんだ、イザーク?」 呑気にそう零していた 「だから言っただろ、言ったって聞きゃしないって」 出て行ったイザークを追ってディアッカが小走りで追いかけてくる 「もうちょっと、手段考えなって。あれじゃの性格上、絶対聞かないよ」 「黙れ!!」 イザークは前を向いたまま一括する 「ああ、イライラの原因はが出撃するからだけじゃなくて見せ場をニコルに取られそうだからか」 その言葉にイザークは足をとめた 「五月蝿いディアッカ!それは貴様だろう!!」 「ああ、おれはそう思ってるよ」 素直に頷いたディアッカにイザークは目を丸くした 「そろそろ俺も頑張らないとな」 不適に笑うディアッカにイザークは真剣な表情を投げかける 「・・・いいな、必ず守るぞ」 「分かってるって」 二人は正面にある機体を見つめ静かに手のひらをぶつけ合った そして、戦場へ |