手が震えてた



久しぶりのコックピッドはこんなにも心地よいのに

何をこんなに怖がっているのだろう

(やっぱり怪我のせいかな・・・)

の右手の痛み止めはもって二時間

(・・・それまでにアルテミスを攻略する。まずは頼んだわよニコル)

レバーを握る手に力を込めた

たくさんの事が頭を横切っていくが、今はそれに捕らわれている場合じゃない

「おいおい、お前なんて顔してんだよ!」

モニターにディアッカの顔が映し出される

「え〜っと、久しぶりの武者震い?」

「うわ〜お前って本当に怖いな〜」

ディアッカが肩を竦めた

あたしは怖いわよ〜、とも笑う

次いで反対側のモニターにイザークの顔が映し出された

「一発目が当たった。次の爆発から出撃準備だ」

「OK。てか、イザーク、アスランがいないからってリーダーぶらないでよ」

は横目でイザークを見るとふざけた笑いを浮かべた

「!!・・・何ィ!」

「むかつくんだったらアスランより上だって証明してよね、戦場で」

まっすぐにイザークを見つめて言った

「ふん!!見てろ、俺のほうが上だとすぐに分からせてやる!!

 貴様こそ足を引っ張るなよ、怪我人が!!!」

(いや〜本当には上手くイザークの闘志を狩り立てるよな)

三人のやり取りは普段と変わらないものだった

ただ、これから人を殺しにいくと言うことを除けば・・・

モニターのイザークの顔がぱっと晴れ、いつもの自信家な笑みを浮かべる

その表情を見た二人は状況を察知し身構えた

「二発目だ!・・・よし、傘が展開しない!!イザーク・ジュール、デュエル出るぞ!!」

「まぁまぁ、気が早いこと。ディアッカ、バスター出るぜ!」

一足先に出たイザークに続きディアッカも意気揚揚と発進した


残ったのはのみ

(これで全てはっきりするかもしれない)

前を見据える

(願わくばなんたら・・・って感じだね)

さてと、とはゆっくり息を吐いた

あたしは大丈夫だ

言い聞かせるようにして心の中で復唱する



・クライン、ガイア出る!!」


















どうかこの声が

貴方に



どうかこの声が

君に




届きますように














 
call 【爆発の中で】















ニコルは次々にリフレクターを破壊していく

「・・・これでもうアルテミスに傘はない」

二発目の爆発から少し時間が経っていた

ニコルはガモフが停滞している方角へ目をやる

「そろそろ、達も合流しますね。・・・よかった、これなら何とか僕一人でも・・・」

突然の目の見えない攻撃に慌てふためいていたアルテミスのクルー達は

 ミラージュコロイドを解いたブリッツにすら対応し切れていない

そのまま、アルテミスの中を悠然と進んでいくブリッツ

「・・・足つき!!」

ニコルは喜ばしい現実に目を開いた

(もしかしたら僕はついてるのかもしれない!!)

未だ動きを見せないAAにニコルはビームライフルを構えようとする

しかし、そこで動きは止まった

AAから何か出てくる

(・・・ストライク!!)

ニコルは全身がぶるりとした

それは歓喜に満ちた武者震い

「あいつ!今日こそ!!」

普段はおとなしいニコルが声を張り上げた

ニコルもやられた仲間の事、たくさんの事に心を痛めていた

その悲しみ、怒りはAA、ストライクにぶつけるしかない

懇親の力をこめてグレイプニールを発射する

ストライクはそれを同じように左腕に供えられたいたパンツァーアイゼンで弾き飛ばす

「・・・くそ!!」

ニコルは苦々しく顔を歪める

目の前ではストライクがシュベルトゲベールを構えていた









「ん〜んん〜んんんんん〜ん〜♪」

「ディアッカ、うざったいんだけど」

鼻歌が通信機を通して耳をつく

「ちょっと、イザークも言ってやって・・・」

イザークが何故突っ込まないのか気になって見てみると正面のアルテミスを食い入る様に見ていた

「・・・こりゃだめだ」

は大きくため息をついて前を見た

そのアルテミスがどんどん近くなっていく

あちこちで爆発が起こっているのが分かった

「ニコル頑張ってるじゃない」

「俺らの出番まで取らないでくれよ〜」

やっとモニターから目を離したイザークが眉を寄せながらどこか嬉しそうに吐き捨てた

「あいつは?!」

もちろんストライクのことだろう

そんなイザークの様子を見てディアッカもにやりとした

「あの要塞ごと沈めてやるさ!!」

「さて、急ごうか!ニコルに全部持ってかれないうちにね!!」

そう言って三人はバーニアをふかした













到着するともうすでにアルテミスは半壊していた

「こりゃほとんどニコルに持ってかれたな〜傘がなきゃ全く面白みのない」

ディアッカはつまらなそうに言ったが攻撃をする手は休めない

「まったくふざけてる!あいつはどこだ!!」

イザークは次々にメビウスを打ち落としていく

デュエルと共にビームライフルで攻撃を加えてたはバーニアをふかし始めた

「入口付近よろしく!ブリッツの姿が見えないから、あたし先に内部へ行くよ」

「待て!貴様!!」

イザークが追いかけようとペダルとレバーを倒そうとしたが

もうすでにガイアは爆発をかわし奥へと消えていった

すぐに見えなくなったにディアッカは眉をしかめる

(・・・あいつ本当に怪我してるのかよ)

「さすが、高速接近戦用MS・・・どうしますぅイザーク?」

「追いかけるに決まっているだろう!!」

さようで、とディアッカが言うと二人はを追って内部に入っていく



(しっかし、傘がないと何とも頼りない要塞だねこりゃ)

ガイアはぐんぐんとメビウスを切り倒しながら奥へ進んでいった

「!?」

たどり着いた先にはAAが停泊している

(やった!)

は小さくこぶしを握り締めた





その少し上でストライクとブリッツの交戦している

「やっぱりニコルが捕まえてたわね!!」

バーニアをふかし接近していく




あれが最後の一機





その尋常じゃない動きにニコルは互角、それ以上を感じていた

(・・・!!この動き!!これでもナチュラルなのか!?

 素人のような動きなのに・・・くっ!イザークがてこずるのも仕方ないですか)

ニコルはトリケロスでストライクの一撃を受け止める

さきほどから予測のつかない動きをしてくるストライクに苦戦を強いられていた

「ニコル!!」

?!」

モニターにはの顔が映し出される

その一瞬のすきにストライクがシュベルトゲベールを振り上げていた

「!?」

「っち!!ニコル危ない!!!!」

が声をかけてしまったせいでニコルの集中力が切れてしまった

ガイアはバーニアをふかせて一機に接近する

間一髪でブリッツとストライクの間に入り込んだ

左腕全体を覆うアンチビームシールドを前に出し受け止めようと身構える

「もう・・・僕達を放っておいてくれーーーー!!」

「?!」

通信機を通して聞こえるその声にレバーを握る力が抜けていった

すぐさま振り下ろされた衝撃が全身を襲う

「くぅ!!」

ガイアはブリッツと共に弾き飛ばされた

それと同時にアルテミス全体で大きな爆発が起こった

もう一撃来るかと体制を立て直すニコルに対しは呆然としていた

「ちょ、しっかりして下さい、!!」

「・・・あ」

爆風に飲まれそうになるの手を引いた

の状態がおかしい

そう気づいたニコルはこんな状態でもう一撃来たら・・・と口を固く結ぶ

ニコルはの前に出て構えた

視界がよくなってくるとストライクが半身を翻しAAに向かおうとしている

「逃げるのか!!」

追おうとしたニコルが目の前の爆発にバランスを崩し遮られた

はAAに着地したストライクが目に入った

自分のガイアの高速用バーニアなら追いつける

でも・・・

ペダルもレバーも押せない

体が固まってしまった

その間にもAAは発進しようと動いている

「ちょっと、何やってるんだよ!!」

通信からディアッカの声が聞こえた

「ディアッカ!!」

「足つきは後回しだ!早く脱出しないとこっちもあぶねーぞ!!」

やっとのことでニコルは体制を立て直す

「わかりました!・・・でも、が!!」

が?」

ブリッツの向きにディアッカも目をやる

爆発の中で立ち尽くすガイアの姿があった

「あいつ!!」

ディアッカが慌ててペダルを踏もうとすると脇をデュエルが越していく

「こいつは俺が連れて行く!脱出だ」

通信にイザークの声が入りディアッカは肩をすくめた

「おいしいところはイザークさんですか」

バスターは納得のいかないような動きで半身返すとブリッツもそれに続く

「おまえ、何をやっているんだ!!」

イザークが声を張り上げるとガイアはゆっくり顔をデュエルに向けた

「・・・イ、ザーク」

「イザークじゃない!!早くしろ、脱出するぞ!!」

「え?・・・あ」

は辺りを見渡すと自分の状況に気付く

「ちょっと、やばいじゃない!!」

「今更焦るな馬鹿が!!」

慌ててバーニアをふかしデュエルに近づいていった





脱出し、爆発に巻き込まれないところまで退避する

爆発が爆発を呼び次々にアルテミスは炎に飲まれていく

そして、大きな爆発がおこり

無敵の防御を誇るアルテミスの最後だった

その爆発を見つめながらニコルはポツリと呟いた

「これで足つきも共に沈んでくれればよいのですが・・・」

「・・・まさか、ほら」

バスターの手がみんなの視線を誘導する

AAが爆発を逃れ脱出しているところだった

「・・・そんな」

「でも、今回はアルテミスを陥落させたからいいんじゃない?次回があるしね」

「それでいい。あいつは俺が打つんだ。そうでなくては面白くない」

ニコルは愕然としていたがディアッカとイザークは違った

楽しむように残忍に笑っていた

「じゃ、帰艦しますかね」

ディアッカがそう切り出す

先ほどからが会話に全く参加してきていない

この戦いの途中からおかしかった

ディアッカはアルテミスを見つめたままのに声をかける

「聞いてんの?

「あ・・・うん」

「どうしたのさ?」

「や、別に・・・ガモフに帰艦するんでしょ」

「・・・分かってればいいけどさ」

はゆっくりとペダルを踏む

四機は成功とも失敗とも言えぬ任務の結果にそれぞれの思いを抱きながら

ガモフへ向かって進み出した





「もう・・・僕達を放っておいてくれーーーー!!」





回線を通じて無断で入ってきたその声


そう言ったストライクのパイロット





あたしが間違えるはずがない






あの声は

間違えようがないのだ





キラ



キラ・ヤマトだった








(・・・アスラン)







どうして

全ての仮定が結論へと向かうのに

そればかりが頭の中をぐるぐると回っていた












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