「・・・アルテミスから帰ってきておかしくない?」 そう切り出したのはディアッカだった 同室のイザークはディアッカが読んでいる俗物的な雑誌をちらりと見て眉を寄せる 「あいつがおかしいのはいつものことだろう」 「そうかねぇ〜何だか心ここにあらずって感じじゃない?」 「ふん、俺の知ったことか!」 (また、素直じゃないんだから) それに伴いイザークの調子が悪かったのも目に見えて分かった (あとすんごく機嫌悪いのも・・・ったく。同調し過ぎだっての) 唯一の良心の俺が考えるに ニコルも心配なのかにべったり で、俺も気になっちゃってるわけで ガモフの赤服組みは全滅なんですよ 「あのさ、イザーク」 「なんだ」 「さっきから読んでるその本、逆なんだけど」 「っ!!」 イザークは真っ赤になって顔を歪める 「あ〜あ、は本当にどうしたんでしょ?」 「そんなに気になるんだったら貴様が聞いてくればいいだろうが!!」 「じゃ、いってくるよ」 ディアッカは立ち上がると上を軽く羽織った 「イザーク」 「何だ!!」 「本当に俺が、慰めちゃってもいいの?イザーク行きたいんじゃない?」 ドアから半身乗り出したディアッカが含みを持たせて笑うと 「さっさと行って来い!!そして帰って来るな!!!」 イザークの怒鳴り声が響いた どうかこの声が 貴方に どうかこの声が 君に 届きますように (おや?) 「じゃ、失礼します」 そう言っての部屋からニコルが出てきた (ほら、もたもたしてるからニコルに先、越されてんじゃんイザーク) 10mぐらい手前で足を止めていると出てきたニコルと目が合う 「ディアッカ!どうしたんですか?」 「それは愚問じゃない?」 「・・・あ、そうですよね」 そう言ってニコルは後ろのの部屋のドアに目をやる 「励まそうって来たらニコルに先、越されてんだもん。抜け駆けだぜ〜」 「そう言うんじゃありません!・・・ただ、アルテミスから元気ないなって少し心配だったから」 ニコルは少し頬を染める (おうおう、満更でも無い顔しちゃって。もうちょっとからかっておきますか) 「そーゆーのが抜け駆けって言うの!」 ディアッカはニコルの鼻をぎゅっと摘んだ 「ひゃめてくだひゃいでぃあっきゃ」 「ははは、ちょっとは鼻、高くなったんじゃないの?」 「もう、本当に冗談はやめてください!!」 鼻を開放されたニコルがディアッカを突き飛ばす 「俺はいつだって本気なわけ。そんじゃまぁ、ディアッカ・エルスマンでますかね」 呑気に笑ってニコルの横をすり抜けようとした 「・・・ディアッカ!」 「ん、なにさ?」 「、元気にしてあげてください」 「それを俺に言うってことは、俺に譲っちゃうって事?」 ディアッカが冗談っぽく笑うとニコルは真剣な目で返す 「・・・僕はただ、元気のないを見ていたくないんです」 「まぁね・・・そりゃ、誰だってそうさ」 そう吐き捨てるとディアッカは床を蹴った 「入りますよ〜」 プシューとドアの開く音がする 「げ、ディアッカ」 「おまえさ、俺の名前の前にゲってよく付くよね・・・」 「いやいや、なんとなくだから。他に他意はないよ・・・多分」 「お前多分って・・・あっそ、別にかまわないけどさ。今ひまなの?」 「あー」 と言っては部屋のハロ時計を触る 『ハロハロ〜13ジ56プン』 「・・・それってアスランの作ったやつだろ?本物の方はすげーよな。」 「ははは、うちは時計機能だけですから、ご安心を。 こいつをまともに扱えるのうちの義姉ぐらいですよ」 訓練生時代 例にもよってラクスに送るためにせっせとアスランが作っていたハロが脱走してしまい 顔見知り総出で捕まえようとしたのだが 回り込んで得意げに待ち伏せしていたイザークがうっかりハロからみぞおちに体当たりを一撃をくらい マジ泣きだったらしい そんな伝説が今でも語り継がれている イザークはアスランだけでなくアスランのロボットにまで負けた という伝説が (あれは確かに悲惨だったね) ディアッカが思い出し笑いを堪えて顔を歪める 「え〜っと、6時間後にイザークとMS戦の模擬するけどそれまでなら」 「は?」 「ガイアVSデュエル。接近戦用MS対決」 「ふ〜ん」 (ちゃっかりやってたわけだ、イザークも) ディアッカは顎を擦る ニコルにもあのイザークにさえ先手を打たれたようで面白くなかった (・・・別に俺は俺のやり方があるし) ディアッカは少しだけやりきれない気持ちを押さえ込んだ 「うん。まぁ、いいやそれまででも。じゃお邪魔します」 ずかずかと部屋の奥まで入っていく は嫌そうに顔をしかめた 「どうぞも何も言ってないんだけど」 「ひどいなぁ〜俺との間柄じゃない?」 「・・・ったく、どんな間柄ですか」 ぶつぶつ言っているの言葉を無視してディアッカはベッドに腰をおろす 今までパソコンのキーを叩きながら話していたが顔を上げディアッカの方を向いた ディアッカはにんまりとする 嫌々でさえちゃんと聞こうとする姿勢はいいと思っている (ま、姿勢だけですけどね) 実際、姿勢としてはよいが顔は嫌そうだった 「あんたもあたしが元気ない、とかそーゆー用件?」 「わかってるんじゃん?」 「ニコルだけならまだしもイザークまで気を使われてんのよ?気持ち悪いを通り越して怖いわよ、あれ」 ほらみろ まだ分かんないのかよ みんな、お前が大事で大切で心配なんだよ でも、そんなことは俺からは言ってやらない この鈍感ちゃんが気付くまではね 「じゃ、話は早いんじゃない?元気無いけどどうしたのさ?」 は視線を落として考えるように目を伏せた 「ねぇディアッカ・・・」 「なに?」 「もしも、もしもね、あんたとイザークが敵だったらどうする?」 真剣な目がディアッカに向けられる 「は?」 どうして引け合いにイザークが出るのかわからずディアッカは頭を捻った (どうしてそこでそこで「あたし」って言えないかね) でもお前だったら俺は迷わず寝返るね お前の理由が何であれお前のそばにいたいから ただそれだけの為に親すら敵に回すのも怖くない たかが恋愛がここまで俺を変えられる きっと俺だけじゃない 少なくともあいつらはそうすると思う (・・・されど恋愛ってところか) ディアッカがすぐに答えを返さないのをみてはまた俯いた 「ああ、でもちょっと違うのか・・・」 「何が?」 「・・・う〜ん。今はやめとく。今、答えもらっちゃたらいけない気がするから」 「まぁお前がいいなら俺はかまわないけど」 「変なこと聞いてごめんね、ディアッカ」 その時のパソコンのモニターが点滅した 「あれ、通信だ・・・誰だろ?」 カタカタとキーを打ち始めた ディアッカも気になったのか立ち上がりに近寄る モニターにウィンドウが開かれた 『!』 「アスラン!!どうしたの?軍の通信じゃなくてパソコンの方の通信だなんて」 アスランは言いずらそうに目を伏せた 「?・・・評議会の報告どうだったの?」 『ああ、そっちは問題はなかったよ』 「本土では三日間の停泊するんでしょ?ラクスには会えた?それともこれから会うの?」 アスランの顔が強張る との間に妙な緊張感が走った 「・・・え?ちょっとアスラン」 『ディアッカ、悪いけど席を外してくれないか?』 なんで? とディアッカは言いたかったがあまりに真剣なアスランの表情に黙ってドアへと向かう アスランはディアッカがモニターから外れるのを待ってから口を開いた 『いいかい、落ち着いて聞いてほしいんだ』 「やだ、なにそんなに神妙な面持ちで・・・」 『ラクスが行方不明なんだ』 「?!」 アスランの言葉には耳を疑う 冗談は、と言いたかったがアスランがその手の冗談を言うような人ではないと分かっているから それが揺ぎ無い真実なのだと思わざるえなかった 突きつけられた現実に言葉が出ない 『追悼一年式典の慰霊団派遣準備のためにラクスがユニウスセブンに向うのは知っていただろう? 「え、・・・うん」 は搾り出すように返事をした 確かにヘリオポリスで学生をしているときにメールをもらった そこには追悼慰霊でのの参加も待っていると書いてある文章だった気がする 『そのラクスの乗った視察船『シルバーウィンド』が、昨夜消息を絶ったんだ』 「そんな・・・」 『俺もさっき聞いたときは耳を疑ったさ。しかも民間船だ。 確認も取れていないし、何があったと決め付けるのにははやすきると思った。でも・・・』 アスランの顔が険しくなる びくりと体を揺らした 「・・・でも?」 『ニュースになる前、極秘で捜索に行ったジンも戻らないらしい』 それは決定的ではないだろうか 決定的? 何が決定的なのだ? 「ア・・・アスラン・・・」 画面の向こうではが小さく震えている 仕方がない義姉妹とはいえ本当の姉妹のように仲良く育ってきたのだ その義姉妹の生死が分からない それは言いようのない不安と恐怖だろう モニターをはさんでというのは遠い と、アスランは唇をかんだ どうして自分はこの手を差し伸べられない場所にいるのだろう 差し出しかけた手を引くとぎゅっと握り締める 『落ち着いて、ヴェサリウスはこれから捜索に向かうから』 「うん」 『大丈夫だよ。ね、大丈夫だから』 アスランが優しい声で言ってくれてる それでもはただ頷くことしかできなかった ディアッカは足を揺すった (・・・まだかよ) 追い出されて待たされていらつき始めていたが帰る気にはなれなかった あのアスランの表情が気になる プシューと音がしてドアが開いた 案の定が出てきたがディアッカには全く気付いていないようだ 自分がいるほうとは逆方向に向かおうとするの腕を取る 振り返ったと一緒に水の玉が舞った 「お前・・・泣いて・・・」 「ディアッカ・・・どうしようディアッカ!!」 その表情はいままでディアッカがみたことのないものだった 必死になってディアッカの腕に縋り付いてくる 勢いよく飛び込んできたの体を支えようと無重力の中でディアッカはバランスを崩した 「なっ!ちょっと落ち着けって!!」 「ラクスが!ラクスが!!」 「ラクス・クライン?」 ディアッカの胸に顔をうずめながらこくこくと何回も頷く 「ラクスが・・・追悼・・・慰霊でユニウスセブンに向かう途中に行方不・・・明になったって・・・」 |