それから数時間後AAは難無く第八艦体に合流した


起きてる?」

医務室のドアからひょっこり顔を出したのはミリアリアだった

後ろからトールも顔を覗かせる

「あ・・・」

は胸が飛び跳ねそうだった

先ほどのキラとの会話を思い出す

きっとミリアリア達にも知れている

それなりの叱咤や暴力は覚悟していた

そんなことを平気でする子たちではないと分かっているのに

「よかった起きてたんだ」

ミリアリアはごく普通に微笑みかけてくる

(・・・なんで?)

「さっきお医者さんに言われたんだけどもう動いていいって!よかったね!!」

「やっと安心できるよ〜この艦も・・・なんだっけ合流した・・・え・・・と」

「メネラオスでしょ、メ・ネ・ラ・オ・ス」

「そうそう、それ!俺達もやっと降りれるんだよな」

「お母さん達も無事だって!本当によかった〜!!」

なんでこんなに普通なの?

すぐに分かった

キラは告げてない

は驚きと動揺でいっぱいだった

「・・・?」

「あ、うん。何でもない・・・よ」

「じゃ、あたし達バジルール中尉に部屋に集まるように言われてるから!ふふ、実は顔見に着ただけなの」

ぺろりとミリアリアは舌を出した

「ありがとう・・・じゃ、みんないるの?」

「うん」

キラが告げてくれると甘えていた

自分で告げなくてはならない

この真実は

「あたしも一緒に行っていい?」


















どうかこの声が

貴方に



どうかこの声が

君に




届きますように














 
call 【自分が選ぶ道】











ミリアリア達が部屋として与えられているところにみんな集まっていた

「大丈夫だったか?」

部屋に入るとサイ達が迎えてくれた

は無言で頷きながら少しだけ微笑んだ

!!」

サイの後ろからフレイが飛び出してくる

「・・・あれ?フレイもここに」

「ええ。、ザフトの人質だったんでしょ?大丈夫だったの?酷い事されてない?」

「あ・・・うん。平気、ありがとね」

を囲ってみんなが笑っている

それが悲しくなるほど嬉しかった

あそこでキラに告げなければこのままだったのかもしれない

(・・・今更何を考えてんのよ、あたしは)

大きく首を振った

「あのさ、みんな…」

はキラと一緒に降りろよ。キラもきっと降りると思うから」

トールが突然言い出した

その言葉にさえぎられては完璧に言い出すタイミングを失ってしまう

が唖然としているとミリアリアが後ろへ回り両肩に手を乗せて除きこむ

「キラも大変だったからまで巻き込みたくないの

 それにきっとキラはが降りるっていえばきっと降りるわ」

「そんなこと!」

「そうだな。までコーディネーターってばれたら大変だし」

「賛成。降りた方がいいよ」

「・・・ちょっと、何だかみんな降りないみたいないい方しないでよ・・・皆、一緒でしょ…」

震えた声で周りを見渡す

みんなは困ったように顔を合わせた

「降りるよ、大丈夫俺たちも降りるから」

トールがそう笑う


嘘だ


すぐにそう感じた

は後ろへニ、三歩と下がる

「…ごめん、ごめんなさい」

他に言わなきゃいけないことがあるのにそれしか口から出ない

あたしは振り返り走り出した

呼び止められた気がしたけれど振り切ってしまった




の頭にはたくさんの顔が思い浮かべられていた

どうしたらいい

どうすればいい

どちらにも大切な人がいる

あたしにはどっちも捨てられない

手の握り締め足を止めた

結構走ってきたのだろう

見覚えのない薄暗い開けた場所に出た

そもそもここに来てからずっとベッドの上だったのでAAの作りなんて全く分からない

目を凝らして周りを見渡してみるとあの新型MSがフェイズシフトを落としてそこに立っていた

(・・・ここはドック?)

「あ、あの!!AAは・・・ラミアス大尉達はこれから・・・」

キラの声だ

キラはそのMSのハッチのそばにいた

は反射的にまずいと思い死角へ隠れる

遠目から見たキラは私服を着ていた

(・・・やっぱり降りるんだ)

「AAはこのまま地球へ降りる。彼女らはまた戦争だ」

もう一つの声が聞こえてくる

誰かと話しているらしい

「君が何を悩むかは分かる・・・確かに魅力だ、君の力は・・・軍にはな

 だが、君がいれば勝てるというわけではない、戦争は。うぬぼれるな」

「で、でも!できるだけの力があるならできることをしろと!!」

「その意思があるなら、だ。意思のないものに何もやりぬくことはできんよ」

それだけ言うともう一つの足音は遠ざかっていった

最後の言葉がキラはおろかの心にも大きなものを与える



は目を閉じた

戦うことも

逃げることも

全て

できるから迷う

ちがう

そこに自分の意思を持たせず相手や状況のせいにして行為を正当化させようとしているから

意思がないから迷うんだ


よく考えて

あたしが出きること

今のあたしが出きること



今、一番にしたいこと



自分は

その意思は

何を思う





いま、あたしは











「ええ。、ザフトの人質だったんでしょ?大丈夫だったの?酷い事されてない?」

はキラと一緒に降りろよ。キラもきっと降りると思うから」

「キラも大変だったからまで巻き込みたくないの

 それにきっとキラはが降りるっていえばきっと降りるわ」

「そうだな。までコーディネーターってばれたら大変だし」

「賛成。降りた方がいいよ」










彼らを守りたい






は目を開き強い瞳で前を見据えた







(キラは何で戦ってるんだろう、て馬鹿なこと考えてたな…)

は肩を竦めて自嘲めいた笑みを浮かべる

彼にとってザフトも地球軍もなかった

そこにあったのは

大切な友達を

彼等を守りたい

という、ひたすら純粋な気持ち

自分だってそうだ

は固く目を瞑る

(生きて地球に下りたら全てを片付けよう・・・今は戦わなくちゃ)

そうだ

地球軍が憎くて

戦いたくて志願したわけじゃない

自分にだって守りたいものがあったから戦おうと思い、そして戦ってこれたのだ


は何を思って戦いますの?」


出発前、ラクスはいつもと変わらぬ笑顔でそう言った

そのときは特に何も思わなかった

(…ラクス)

わたしは自分の思ったことのために戦うよ

遠くプラントにいる妹に深く感謝した


キラがこれを降りてしまえばAAの戦力が落ちるのは目に見えている

とにかく、みんなが無事にオーブに戻るまで

(そこからはまた考えるから・・・いいよねラクス?)

だから










あたしは黒々とした機体を見上げた


















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