ひどく頭痛がする。 なれない砂漠の戦い、キラとの戦い、そして (・・・あの馬鹿二人) 頭痛がしない人がいたら見てみたいと顔をしかめる。 「感動の再会だろう?どうしたんだい?」 「あ、いえ、私事です。」 ふぅんと何かを含んだように目を細めた。 「さて、お出迎えをしなければ」と暢気に笑うバルトフェルトにとダコスタは苦笑いをしながら敬礼をする。 アイシャは微笑んで見送りの手を振る。 「砂漠の日差しはお肌に悪いから」だそうだ。 どうかこの声が 貴方に どうかこの声が 君に 届きますように 「バルトフェルト隊長はクルーゼ隊長が嫌いなんですか?」 少し前を歩くバルトフェルトの背中を見ながら、隣のダコスタに話しかける。 「え?」 「なんか、そんな感じを受けたんですが」 あー、と言ってダコスタはばつの悪いように目をそらす。 「包み隠さず言えば、嫌いだと思いますよ」 ダコスタは苦笑いを浮かべながら耳打ちをした。 「・・・やっぱり」 妙に納得したようには頷く。 人に目を見せないやつなんて信用できるか、とバルトフェルトは言った。 人の意見を聞いて自分の事を考えた。 自分はどうだろう。 (まぁ、確かに隊長は頼れるけど、信用とは違う、かな) 今までそんなことは考えたことがなかった。 目的のために最善をつくし戦うだけ。 それだけだったのに。 「さん」 再びダコスタがに耳打ちをした。 「実は隊の配属の際に」 「ダコスタくん」 今まで数歩前を歩いていたバルトフェルトが始めて口を開く。 「・・・君たちね、本人が目の前にいるんだから本人に聞けばいいじゃないか、まったく」 バルトフェルトには全部聞こえていたのだ。 振り返ったバルトフェルトは困ったように笑った。 「すみません」 二機のガンダムが姿を現して、赤いパイロットスーツに身を包んだ二つの影が姿を現す。 輸送機の離陸により強い風が吹き荒れた。 砂が舞い上がり、視界が悪くなる。 (大魔王降り立つ、か) は肩で大きくため息をついた。 「うわっなんだこりゃ、ひでぇところだな!」 聞きなれた緊張感のない声が聞えてくる。 砂煙が落ちつい手来てその姿がはっきりと確認できた。 イザークとディアッカだ。 二人は顔を顰めたまま正面に立つ人物を見た。 「砂漠はその身で知ってこそ、てね。ようこそレセップスへ。指揮官のアンドリュー・バルトフェルトだ」 悪戯っぽい笑みを浮かべてバルトフェルトが迎える。 今度の戦いで自分の上官になる人物だと分かった瞬間、急に姿勢を正して敬礼した。 「クルーゼ隊、イザーク・ジュールです」 「同じくディアッカ・エルスマンです。」 次いでダコスタとも敬礼をする。 イザークはをちらりと見て眉を寄せた。 ディアッカは口の端を上げる。 それに対しては思いっきり顔を顰めた。 「宇宙から大変だったな、歓迎するよ」 心にもないことを、とダコスタは笑いそうになるのをこらえる。 「戦士が消せぬ傷を治さないのは、それに誓ったものがあるからだ、と思うが、違うかね」 イザークの肩がゆれた。 そのまま歯を食いしばりそっぽを向く。 (・・・分かりやすすぎなのよ) 「そう言われて顔を背けるのは”屈辱の印”とでもいうところかな」 イザークの顔が怒りで染まる。 あー、とは頭を抱えた。 この人のこういうことろも、どうにかならないのかとダコスタに目をやる。 すみませんと言いたそうにダコスタは肩をすくめた。 「そんなことより足つきの動きは!!」 「あの艦なら、ここから西方へ180キロの地点、レジスタンスの基地にいるわ。」 腕を組みなおしたはイザークに首を傾けながらそう告げる。 「無人探査機を飛ばしてある、映像見るかね」 バルトフェルトを先頭として五人は歩き始めた。 ちらりと横目で二体のMSをみる。 「なるほど、同系統の機体だな・・・あいつとよく似ている」 あいつとはストライクのことを言っているのだろう。 は目を落とした。 「あの・・・バルトフェルト隊長はすでに連合のMSと交戦されたと聞きましたが」 まったく遠慮のない言い方でディアッカが問う。 バルトフェルトは困ったように肩をすくめた。 「そうだな。ボクもクルーゼ隊を笑えんよ」 またそうやって人の神経を逆撫でするようなことを言って、とダコスタと二人でため息をつく。 やはりその通りで二人はむっとしたような顔をしていた。 (あーあ、どうなることか) 空は晴れている。 むなしいほどに。 パイロットスーツに身を包んだはドックでガイアを見上げていた。 ひやりとした風が頬をかすめる。 「装備は実刃のソードでいいんですか?」 「ありがとうございます」 ボードを持った整備士が最終確認をした。 は小さく頭を下げて礼を言う。 「よお、久しぶり」 声をかけられて振り向くとディアッカが手をひらひらさせながら近寄ってきた。 傍にいた整備士は敬礼をするとすぐに離れていく。 「久しぶり」 「どうだ、ガイアの調子は?」 妙に変な話し方をするディアッカには眉を寄せた。 「・・・なんでそんなによそよそしい挨拶すんのよ」 「別に」 ディアッカは隣に立ってガイアを見上げた。 「もしかして気、使ってるの?」 「無事だったんだから、なんの気も使ってねーよ」 「あそ」 二人は黙ったままガイアを見つめ続けた。 白い機体は薄暗いドックに良く生える。 「お前、やせたな」 沈黙が少し重くなったころ、ディアッカが口を開いた。 「やっぱり気、使ってるじゃん」 「使ってねーよ」 「はいはい」 なんだかあまりに当たり前の日常には笑いがこみ上げる。 「なに笑ってんだよ」 「ありがとう」 礼を言われるとは思わなかったディアッカはきょとんとした顔でをみた。 思わず声を上げて笑ってしまう。 すぐにディアッカはばつの悪そうな顔をして口を曲げた。 「ったく、ずいぶん素直だな。きもちわりぃ」 「バルトフェルト隊長!!」 二人が笑い合うと同時にドックにイザークの声が響き渡る。 あーあ、と言いたそうにディアッカは肩を竦めて声の方向へ向かおうとした。 「何、癇癪おこしてるのあのおかっぱは?」 「たぶん、俺らが後方支援を命じられたからじゃないのぉ?」 面倒くさそうに手をひらひらさせる。 その様子に笑みを浮かべた。 「ご苦労様」 「お前も無理するなよ」 そう言ってディアッカは行ってしまう。 「意外に鋭いこって」 その背中を見送りながら肩を竦めた。 ガイアを起動させる。 アークエンジェルとレジスタンスは動きを見せた。 こちらも動かなくてはいけない。 怖いものなど 「」 何もない。 『大丈夫?』 愛くるしい舌足らずな声が聞えてくる。 アイシャだ。 「準備完了しています」 その答えが適切なものではないとは分かっていたがごまかしたかった。 『ま、別にいいわ。頑張りましょ』 含みのある微笑みを浮かべて通信をきる。 (・・・あの人にこの愛人ありだね) レバーをしっかり握った。 大きく息を吸い込んで長く吐く。 怖くなんかない。 『バルトフェルド、ラゴゥ出る!!』 通信から声が聞え、バルトフェルドが発進していった。 怖くなんかない。 喉が渇いてくる。 「出ます」 やっと一言搾り出した。 怖くなんかない。 「」 「」 「」 怖くなんかない! 「・クライン、ガイア出る!」 |