おっちゃんが 「時間だ」 と中に入ってきて会話は途切れた 二人は渋々と立ち上がって口々に 「早く直せ」 「お大事に〜」 等と告げて出ていこうとする あたしは前の言葉を無視して 「うん、ニコルによろしく」 と嫌味たっぷりに言ってやった イザークが睨んでくる (怖っ!どうせあんたらがマイ天使ニコルを置いてきたんでしょうが) 今更だがお見舞いに来てくれるならニコルがよかったな、なんて考える でも何て言うか、後半は先走っちゃったザラ家のぼっちゃんで一杯だったけど、 またこうやって同僚と行きて話せたのは嬉しい ん、生きて…? ちょっと待てよ 何であたし死にかけたんだっけ? 何でこんな傷をおってるんだっけ? 思い出した怒りに顔を歪めた 「ねぇ、ディアッカ」 おっちゃんと出口際で話していたディアッカに声を掛ける あたしの顔を見たディアッカはどんどん青くなっていった どうしたのよ あたしまだ笑ってるだけじゃない? どうかこの声が 貴方に どうかこの声が 君に 届きますように どうしてこうなってしまったのだろう 妙に長く感じる廊下を歩きながら、トール達の誰もがそう思っていた 突然の襲撃、抗争 ヘリオポリスの崩壊 何も分からず投げ出された宇宙 今まで自分達が足を着け生活をしていたものがただの鉄の欠片になっていく 目の前で崩れていくコロニーを見つめながら自分達の日常も崩れていくような気がした 今、彼等は戦艦の中にいる 「アークエンジェル」 二度目の襲撃で出現したこの戦艦がストライクと彼等を守る唯一の砦だった 先の戦いでも見たとおり、敵、ザフトは容赦なく攻撃をしてくる このままでは圧倒的に数でかなわないだろう 軍人ではない彼等はとりあえずの処置で一般兵の大部屋に押し込まれる 重苦しい雰囲気に皆、うつ向いて言葉を発しようとしない 考えるのは 親のこと 自分のこと いなくなった友達のこと 「…が死んだなんて…」 ポツリとつぶやいた声がやけに響いた 「やめてよ、トール!まだそうだって決まったわけじゃないじゃない!」 そういってミリアリアは手で顔を覆う 「…分かってるけどさ、状況が状況だし、あの工場区の爆発見ただろ… しかもあの工場区で撃たれてシェルターまで、なんていくらコーディネーターだって無理 だよ」 サイもうつ向いたままそう言った 「なんでそんな事平気で言えるの?キラがは生きてるって言ってたじゃない !」 「…そ、そうだよな」 ミリアリアは必死になって自分にも言い聞かせるように言った それが彼女の強がりだと分かっていても周りもそう思いたかった 「…でも、なんでキラはそんな事言えるんだろう」 カズイがぽつりと呟く 工場区で一緒だったのは話の内容から分かった 生きている、と叫んだキラ 少なくともあのキラの表情はカレッジでずっと一緒だったが見たことのないものだった そう、いつも穏やかで本気で怒ったり怒鳴ったりしなかったキラがだ そして、あの時明らかにキラは何かを隠していた キラしか知らない、自分達のしらない事実を 皆の視線は二段ベッドの上で膝を体に寄せ小さく寝息を立てるキラへと向いた 「あなたたちの正義は人を見捨てても軍事機密を守ることなんですか?」 「・・・それは・・・あの場では仕方なかったのよ。そうしなければこの一機すら守れなかったわ」 「仕方ない仕方ないって!!あなた達はそればっかりだ!!! それにあなたがこっちへこいって言ったんですよ?なのに・・・なのに・・・」 「お友達のことは悪かったと思っているのよ、とっさだったとはいえあたしは一人を見捨てたわ・・・」 「なんでそんなが死んだような言い方するんですか?は生きてます!!」 「え?・・・君、今なんて」 「っ!何でもないです!とにかく僕はもうこんな人殺しの道具になんか乗りませんから!!」 「とりあえず、こいつだっていろいろあったんだ寝かせてやろうぜ ・・・多分、がいなくなったの一番ショックなのキラだと思うから・・・」 「ちょっとこっち来てよ」 にっこり 「ん、あ、ああ」 ディアッカはまたも体をびくりと震わせた 「ん?何だ?」 「イザークは関係ないからあっちいって」 おずおずと近付いてくるディアッカに着いてこようとするイザークを片手で「し っしっ」とあしらう イザークが凄い顔をしたがはあえてほっておいた ベッドのそばまできたディアッカにもう一度にっこりと笑う 「約束覚えてる?」 「な何、約束って?」 明らかにディアッカの声が上擦った 後ろにいたイザークが不信そうな目をむける 「ガイアのシート外してぇワックス掛けとぉ、あとOS…は自分でやるからいいでしょ。 その二つ、一人でやっといてね。お願い」 指を折りながら用件を猫撫で声で可愛いく上げていく ディアッカは不満の声を上げようとした 「な、なんで俺…ぐぇっ」 (あんた、自分の立場分かってる?今回のあたしへの連絡ミス、 隊長やイザーク にちくられたくなかったから、素直にあたしのお願い聞いてねVv) ディアッカの言葉はに急に襟を掴まれ飲み込まれた 至近距離で凄まれる 文末にVvマークが付いていたがのその威圧感と迫力に素直に頷いた 「わ、分かりました」 涙目になったディアッカは自らの自尊心をかなぐり捨てて涙目で答える (確かにさ、俺が悪いけどね・・・何か俺、格好悪い) ディアッカは泣きそうになって頭を抱えた はディアッカを従えさせると後ろのイザークに目を向ける の方から見ればイザークの機嫌がみるみる悪くなるのは分かったが 背中を向 けているディアッカはイザークの鋭い視線に気付いていない (・・・まだまだこれからだからね、ディアッカ) イザークは自分がいるのに話にいれないとすねるのだ が見たところ、そうとう頭に血が上っている (あたしがこれ以上手を下す必要も無いわ、あとは任せたわよ、イザーク) イラついてるイザークはこのあとガモフに帰る際、ディアッカに当り散らすだろう そしてディアッカもイザークのねちねちしたキレ方が大の苦手なのだ 「人がやられるのは楽しいが自分がターゲットになるのは嫌」なので半泣きになるだろう 別にそう打ち合わせをしていたわけでもないがこの技(?)は クルーゼ隊のメンツの性格を把握しただからこそ完璧に遂行できるのだ (ふん、あたしに怪我を負わせた罰だ) こんどはにやりと笑う 肩を落として振り向いた勘のよいディアッカがイザークの様子を見ての意図を掴んだらしい (・・・そうだよ、あいつの仕返しがガイアの下準備だけで終わるわけが無いじゃない) さらにがっくりと肩を落とすディアッカがいた イライラの最高潮なイザークとその後ろに付いて行くしょぼくれたディアッカを 笑顔で見送る 医務室の扉が完全に閉じると、ぽすりとベッドに倒れこんだ 我慢していた汗が噴出した 苦しそうに肩で息をしている 「お前さんも無茶をするな」 入り口にいた医師が近付きながらあきれたようにため息をつく 「あたし・・・無茶が好きみたい」 「お前の場合は笑えないんだよ」 医師のその大きな手で撫でられるとは得意のへらりとした笑みを浮かべた 体はとっくに限界だった よく顔に出さなかったと自分をほめてやりたいと思った 痛みと疲労感にまた眠気が襲う 「・・・ごめんちょっと寝かせて」 医師が黙って頷くとはゆっくりと瞼を閉じた とっくに切れていた麻酔に痛みがじわじわとこみ上げてくる ズキズキといたむのは被弾した傷口か それとも心の傷だろうか? それでも目を覚ませばきっとよいことがある そう思いながらは眠りに付いた しかし、が次に目を覚ましたときに更なる悲劇が待ちわびているとも知らずに |