肩を震わせていた

俺の世話係だといったこの女は

無防備に背中を自分のほうへ向け泣いていた



いつもなら傲慢な態度で俺にかまってくるくせに

俺もそれを楽しんでいたけど



それが今は弱弱しく泣いている



何度も自分の気まぐれで泣かせた女は居たがそれとは全然違う

そのときはどうして女は涙を武器にしようとするんだろう

と反吐が出そうだった




なのに、こんなにも涙を流すこいつをいとおしいと思っている




正直に言うと

お前に会ったとき、俺は本当は気づいていた

確信に変わったのは最近だけど

お前とオーブで会ってたって事

あの時、よく分からないけど運命だって思ったのも確かだった

だから忘れるはずがない





俺は自然に伸ばしていた手はを抱きしめていた

きっと突っぱねられると思っていたのに



その腕は意外にもあっさり受け入れられた


そして、その腕を握りかえされる



そのいとおしさに俺は





放したくないと思った














Me too  act10.5












本当に冗談じゃないと思った


あのだっさい、センスのかけらもないMAにやられるなんてさ

俺、コーディネーターだよ?




本当に最近ついてない


この間、壊されたMD、イザークに弁償してもらわないとな

・・・ああ、生きて帰れたらだけど



おれはゆっくりとハッチを開けた

立ち上がると衝撃のせいか足元が少しふらついた



目の前には・・・



わお・・・銃をたくさん持ったお兄さんたちがいっぱい

俺どうなっちゃうのかしら?




まぁ諦めも肝心だって誰かが言ってたっけ





てか、格好悪いな、俺

ニコルの仇もイザークの傷のお礼も何一つしてないし










「だから、何にも持ってねぇって言ってるだろーが」

一応、丁寧に検査をされた

てか、この服何なんだよ・・・ダサっ

「まあまあ落ち着けって」

椅子に座って呑気な顔してる奴が手を振って俺を落ち着かせようとする

「・・・あんた見た感じえらそうな人っぽいけど」

「俺?俺偉いよ〜メビウス・・・

 あ、今はスカイグラスパーっていう、君を撃ったMAのパイロットだもん」

あ〜俺を打ち落とした奴ね・・・

思わず目が据わった

「いやさ、そっちがこっちの捕虜なんて珍しいだろ?みんな怖がっちゃってさ」

大体予想がついた

コーディネーターはナチュラルより身体能力が勝っている

検査の途中で何をされるか分からない

(・・・まぁ、イザークとかならやるかも知んないけど、

 俺は敵艦で命からがら帰るって面倒なことはしないからな)

「で、勇気ある俺が君の検査に立ち会ってるわけだ」

「左様ですか」

「さて、いいかな?じゃあお前ら、彼を連れていってくれない」

「はっ!!」

そんなに緊張して強張ってるとからかいたくなるでしょ?

・・・でも、まぁたしかに、今はそんな気分じゃないけどさ

イザークに比べればちっさなプライドだけど結構傷付いてんだよね

嫌味の一つでも言ってなきゃやってらんないわけよ

廊下を歩きながら俺を連れてゆく兵にぶつくさ文句をいってみる

視線が俺に集まってるのはすぐに分かった

俺ってそんなに格好いいかな?

なんて冗談も言ってみたくなるわな

あーあ、動物園の猛獣かよ、俺は

てかさ、前から思ってたけどさ地球軍の制服ってダサいよな

青が一般兵、ベージュは士官って所か

「・・・ん?」

また鮮やかなピンクだこと

「へ〜この鑑にはこんな女の子もいるんだ〜」

自分のことだとわかったのか女はびくりとした

うわ〜ちょっと話し掛けただけなのにひっどい態度

おどおどしてる女に作業着の男がかばうように前に出てくる

・・・そういうわけね

「ふ〜ん彼氏に守られてんの」

男のほうがかっとして掴みかかってきそうだったが色眼鏡に止められてひっこんだ

お〜こわ

からかうなら女のほうが楽しいっつうの

ん?

「あれ〜?もしかしてあんた泣いてるの?」

その目は真っ赤になり明らかに泣いたような跡があった

なんども見た女の涙

あ〜あ、女は気楽でいいよな困ったら泣いて、調子悪くなったら怒って

てか、泣くなら戦場になんかくるなよ

ここにきて俺の中に初めての苛立ちが生まれた

「ばっかみたい何泣いてるの〜」

おれは思いっきり嫌味をこめて言ったやった

こんな女を軍に入れてさ、地球軍は何、考えて戦争してんだか

こんなのと戦ってたわけ、俺ら?

あ〜なんかやる気なくなるな・・・

?!」

そう声が耳に入って俺は半身返す前に無理やり胸倉をつかまれて




気づいたら頬に床の冷たい感触が




あ・・・れ?

頬に感じる居痛みに我に返った

俺、殴られた?

思わず俺の前に立ちはだかるそいつを見上げるとぶつかった視線に驚く

あまりにも強いその視線は何も言わせてはくれなかった

そうしているうちに俺を連れていた兵士がそいつの前に立ち質問をしている

俺はまだ呆然としていた

二等兵であります」

女?!

「ほら、お前もとっとと立て!!」

「・・・ち、何だよ」

まだ、何かに取り付かれているようにふらふらする頭を二、三度振って上半身だけ起こした

このアマ・・・

「殴られれば誰だって痛いのよ」

その言葉に俺は顔を上げるとその女の顔をちゃんとみた

それはたくさんの感情が入り混じった複雑な顔

その言葉の意味を感じ取った

地球軍の奴等の顔なんてはじめて見る筈なのに何か心に引っかかる

(なんだよ・・・なんて顔してんだよ・・・)

俺はなんだか急に自分の態度が恥ずかしくなってしゃんと立った

そいつの顔も見ず、振り返りもせず俺は歩き出す



殴られた頬はイザークのときよりぜんぜん痛くなかったはずなのに

いつまでもずきずきと俺の頬を心を痛めつけていた









よく考えてみると俺の不運はここから始まっていたのかもしれない



その後も散々だった

汚らしい場所に押し込まれてさ

あの廊下であった外はね女が俺を襲ってきて

(おいおい、ここの管理ってどうなってるんだよ)

赤い髪の女なんか銃を持ち出してきて

(何なのこいつ?まじ怖いんだけど)

あの色眼鏡も助けに着たがてんで役に立たなかった

(いるだけ邪魔なんだよ!助けるなら、早く助けろ)

ああ、本格的にやばいなって思ったとき


あの声が聞こえた





「何やってるのよ!!」




暗かったこの部屋で廊下の光を背にそいつは立っていた

顔は逆行で分からなかったが

その声ですぐにアイツだとわかった








俺は少し、神様を信じようという気持ちになった














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