額の傷がズキズキ痛んだ 俺を無視して会話はすすいる (・・・なんだか面白くなんんだけど) もう少し捕虜の心配とかしてくれてもいいんじゃない? 俺、額から血が出てるよ 痛いよ 泣いちゃうよ 気づいてくれるわけないか・・・ むなしいからやめよう 君達、パンツ見えてるし ああ、俺ちょっと余裕出てくるとこれか・・・ もっと捕虜らしく緊張感もってみるか Me too act10.5 そうしているうちに他の兵が出てきてその場は収まった あの色眼鏡は女の子達を連れて出ていった でもあいつは残っていた 呼び止められた上官らしきやつと話してる 表情がくるくると変わっていた (・・・ぷ、おもしれぇ) あいつの目がこちらに向いて史上最悪な顔をする 俺としてはそこまでされちゃったら極上の微笑で答えないとね その後、あいつは絶望的な顔で笑いだした 近づいてきた兵が嫌そうな顔で俺を見る 「おまえの世話はあいつがする。さぁ立て移動だ」 「へいへい」 おれはしぶしぶ立ち上がると手を引かれあいつの前に立たされた 「では頼んだぞ、二等兵」 「・・・はい」 本当にいい感じで嫌な返事するね、あんた たくさんのクルー達がこいつに話し掛けてきた (・・・へぇ結構な人気者で) 俺は何とか会話を展開するために頑張ってみたが全く乗ってこない ・・・こりゃ、こいつは覚えてないのか、オーブで会った事? ちょっと悲しくなっちゃうよ、俺 やっとまともに会話ができたのは牢に入れられてからで パンツの一枚や二枚で脱脂綿これでもかと言うほど押し付けるのやめてくれない? 本気で痛いんだけど あんたもやっぱりコーディネーターだから何しても痛くないって思ってくち? 「ま、こんなもんで平気でしょ?あんた丈夫そうだし」 「コーディネーターだから。とか言わないんだ」 不思議だと思ってるのは俺のほうなのに、こいつはもっと不思議だと言った顔で俺を見る 「なんで?あたしはあんただから、って言ったんだけど?」 あんたおかしんじゃない?といいたげな口調だった そのあまりにも普通なあいつの態度に俺は何にも言えなかった だから、俺はおかしかったのかもしれない 運命を感じたからって、地球軍じゃどうしようもないと思ったから諦めてたのに こんな一介の兵士に名乗る気もなかったし こんなにも馴れ合う気もなかった なのに・・・ 話し掛けた俺に 名前を名乗った俺にあいつは普通の態度だった 俺は嬉しかったのかもしれない 俺は俺だって思ってくれる事が 調子に乗っていろいろ聞き出そうとした 別に軍事秘密とかじゃなくてここにきて素朴な疑問 昔っから気になる事は口に出さなきゃいられない太刀だったから うっかりした事を口にしたのだとすぐに分かった あいつの目の色が恐ろしいほどにどんどん変わっていく 怒りの色に 悲しみの色に 「はじめて見たでしょ、あんたたちが殺した人たちの残したものを」 そう吐き捨てるようにいった その表情は俺を殴ったときと同じ顔をしていた 分かってたんだ こいつはナチュラルで地球軍で俺はコーディネターでザフト 面白いほど相対した存在なのだから お互いがお互いに持っている憎しみがある 分かっていたはずなのに こいつがこんな顔をしたりするなら志願すらしなければよかったと思ってしまった それでも今はこの状態なのだ こいつがここに来なくなるんじゃないかと思って不安になって 「お前、俺の世話なんだろう?その・・・またくるよな」 そんなこと言う気は全くなかったのに気付ば口からそんな言葉が出ていた 振り向かなかったがきっとその言葉は届いていると思った 根拠のない自信だったが あいつの言葉がぐるぐる回る 一人でいるといろいろ考えてしまった ナチュラルとの戦争 ミゲルやラスティ、ニコルの死 人を殺す事 俺は何のために戦っているのか 何の為に人を殺すのか そして、あいつの事 (コディネーターって頭いいって言うけど、あれは嘘だね、全く答えが出てこないでやんの) 暗闇の中ずっと考えつづけてた それでもその暗闇が晴れるときがあった 食事の度にあいつはちゃんと顔をだしていたから 俺達の会話は牢にいるのがおかしいぐらい普通だった ナチュラルとの抗争さえなければ・・・ こんなに色々苦しまなくてよかったのかもしれない この気持ちは何なのだろう? 自分の中で確実に膨らんでくるこの気持ちは・・・ 穏やかなようで 荒波のようだった 俺が悩んでいるように あいつも悩んでいた そう気づいたのはあいつが限界になってからで いつもと様子が違うと思ったら破裂寸前の風船みたいになっていた 格子に寄りかかっていた肩が小さく震えている さすがの俺もそこまできて黙ってはいられなかった 「え・・・お前、泣いてんの」 思わず上ずってしまった声が恥ずかしかったがそんな事を言っている場合じゃない ぽそりとあいつが話し始めた 「あ・・・たし、男の子に生まれたかった・・・コーディネーターになり・・・たかった」 その声はひどく弱弱しくて胸がつかまれた 「・・・こんな戦争を止められる・・・力が欲しい・・・」 こんな戦争 「そうしたら、そうしたら誰も死ななかった!!」 誰も死なない 「こんな、力の・・・無い自分が・・・嫌い・・・」 そう吐き捨てられた言葉は俺を貫いていく こいつはこんなにも考えていた ナチュラルとかコーディネーターとか関係ない 何故戦うのか 何故殺すのか こんなにも小さな体で こんな大きな事を貯め続けていた なんて難しい問題なんだろう でも泣いているこいつを見ていたら たくさん事が真っ白になって 「お前・・・」 俺はもう何も考えられず気づけばあいつを抱きしめてた 冷たい格子とは裏腹にこいつの体温がやけに熱く感じて 最初は体をこわばらせていたがすぐに力が抜けていく 間に格子があるにもかかわらず身を摺り寄せてきた それから俺の腕を握って来たり 堪え切れずに出した声も それの全てがどうしようもなくいとおしい どうして俺の前でそんな顔するんだよ 俺にどうしてほしいんだよ なんで俺なんだよ 俺は自分に都合のいい男だから都合のいい解釈するぜ? たまらず名前を呼んで 唇を重ねた 驚いて見開かれた眼に自分の顔が映る こんなやり方はずるいって分かってる 弱ってるところをつけ込むなんて でもお前だって・・・ 俺の前で泣いたりするから だから そしてもう一度唇を重ねる こんなにも人をいとおしいと思ってキスをしたのは初めてだった |