とぼとぼと足はそこに向かっていた 駄目だって分かってるのに 無駄だって分かってるのに 足は本当のあたしの気持ちを尊重するように 進み続けた 「すっきりした?」 ただの憎しみの対象だった 「コーディネーターだから。とか言わないんだ」 コーディネーター、ザフトの軍人 「ディアッカ・エルスマン。俺の名前」 バスターガンダムのパイロット 「お前、俺の世話なんだろう?その・・・またくるよな」 でも 「お前さ、これから俺が使うスプーンをよく平気で使えるよな」 あたしたちと何も変わらない 「ん?何、俺の顔見て・・・はは〜ん、もしかして惚れた?」 冗談も言うし 「あんた、何かあったの?」 悩みもするし 「え・・・お前、泣いてんの」 優しいくて 「落ち着いた?」 暖かい 「分かったよ、キスの事は悪かったって!まぁ、お前もこれにこりて不用意に俺 に近付くなよ」 人間だった 「お前、俺のこと好きなの?」 でも牢の前に立ったとき現実を知った 「・・・そうだ」 あたしはもうあいつの世話係じゃない それでもう終わり ドアに通すカードキィも名目もなくなった じゃあ どうして 開かない扉の前で涙を流してるんですか? Me too act14 ざわついた廊下に戻るころには涙は引いていた (ドックに・・・行くか) またフラガに会うかもしれない それはまだ少し辛い でもどこにも行くところがないから あたしは 居場所がないから 角に差し掛かると向こうから誰か歩いてくる 遠めに金髪のフラガでも一般兵の青の軍服を着たキラでもなかった (・・・よかった) 足音は角の手前で立ち止まり何やら話をしているようだ 「・・・おまえ、捕虜の監視、任されたんだって?」 その言葉にの足は止まる いけないと思いながらも聞き耳を立てた 「ああ、でもさコーディネーターなんて、ほらやばいだろ?」 「まあな。だってほら、ドックのあのこ、なんていったけ?ヘリオポリスの学生の 何が原因か知らないけどけどあのこだって倒れちゃったしな」 「みたいだな。この戦いで再確認したけどさ尋常じゃないよ、あいつら」 「そうそう、あんな遺伝しいじった危ない奴らなんていなくなったほうがいいんだよ」 「あ、コーディネターっていえば驚いたよな、あいつ」 「キラ・ヤマト!」 「まさか、生きてるとは思わなかったよ。しかもあれ新型MSじゃないの?」 「まさか、ザフトのスパイとかになったんじゃないよな?」 「まさか・・・でもあいつコーディネーターだし」 「ま、何にせよ結局、あいつもコーディネーターっていう化けもんだったってことさ」 胸が鷲掴みにされているようだった 怒りで 恐怖で 唇が乾く 一体、この人達は何を言ってるんだ? 「でも、お前、いくらなんでも食事もって行かないのはまずいだろう」 「ああ、別にちょっとぐらい食べなくても死にはしないだろ?」 「まあな、確かに。なんてったてコーディネーター様様だもんな」 「でもバレたらさすがに俺が不味いかな」 噛み締めた唇に血の味がした 怒りはとっくに頂点を超えていたのに揺さぶられるような激情はない はゆっくりと動く 角から顔を出すと兵士達がびっくりしていた 「あ・・・」 「ほら、あの子だよ。ドックの」 「あ、ああ。もう大丈夫なのかい体は?」 上司ぶって平然とした態度で接してくる 「・・・食事、持って行ってないってことですか?」 「え・・・」 「捕虜に食事を持って行ってないって事ですか?」 の視線に二人はびくりとする ひとみの奥に怒りの色が見えた 二人は動揺する 「今の話・・・聞いて」 「持って行ってないんですね」 その威圧感に一人は一歩下がる もう一人はやっとのことで言葉を搾り出した 「・・・君だって捕虜に酷い目にあったんだろ?じゃなきゃ倒れたりしないし だったらいいじゃないか。せいせいするだろ?」 だから 内緒にしておけ とでも言いたいのか はからだの中で何か大きく動いた気がした ディアッカを殴った時よりももっと大きな衝動 ガンッ 不意を突かれた兵は床に叩きつけられる 「お前!!」 下がっていた兵士がもう一人のそばに駆け寄って声を上げた 「・・・コーディネーターだから何だって言うんですか?!」 は拳を壁にたたきつける 二人は体を少し動かした 「じゃあ、あなたたちはナチュラルだから偉いって言うんですか?!」 「それは・・・」 「コーディネーターだって人間なんですよ!!あたし達と同じなんです!! どうしてそんなことが出来るんですか?平気な顔して言えるんですか? あなた達のほうがよっぽど異常よ!!」 その言葉に殴られたほうの兵士は顔を歪める 「お前らみたいに平和なヘリオポリスで、オーブで暮らしてたガキに何がわかる!!」 「・・・あたしたちだってこの数ヶ月、軍人としてやってきました それより前から戦っていたあなた達がどうして何も気づかないんですか!!」 「・・・くそっ!このガキが!!!」 「お、おい、お前!!」 隣にいた兵士が慌てて止めに入ったが間に合わなかった の頬に強い衝撃が与えられる 今度はが床に叩きつけられた 「お前、手を出すのは不味いって!!」 「そっちが先に殴ってきたんだ!クソ!女が、知ったような口をきくんじゃない!!」 女 またそんな言葉であたしの言葉すら聞いてもらえないのか は体を起こす 口の中は血の味しかしなかった 見下すように笑いを浮かべられる 悔しかった キラが、少佐が命を掻けて守ってきたものがこれだなんて それを目の前にして何も出来ない自分にもだ 「それに別にあいつに助けてくれって言ったわけじゃない」 はそんな残酷な言葉に耳を疑った 廊下を歩いていたサイとキラがこの先の角での異変に気づき駆け付けた 「どうし・・・??」 「え・・・」 そこには頬を腫らし口から血を流すと二人の兵士の姿だった 「おやおや、何やってんのよ、これは?」 いいタイミングで反対側からきたフラガも顔を出す それでもはキラ達に見向きもせずに二人をただ睨みつづけていた 「フラガ少佐、いいところに。こいつが急に殴ってきたんですよ」 「は?」 「そ、そうなんです」 頬を腫らしたほうの兵士がそう言ってもう一人もおずおずと頷いた の目がかっと開かれる 兵士に飛び掛りそうになるをサイが慌てて押さえた 「ちょっと、駄目だって!何やってるんだよ、!!」 「あんた立ちいい加減にしなさいよ!!どこまで身勝手なのよ!!!」 身動きが取れずばたばたとサイの手の中で暴れる その様子を交互に見ながらフラガは納得いかないように首をかしげた 「どうも状況を見ると、俺の勘的にはお前らのほうが悪者に見えるんだけど」 「そんな!少佐は俺達よりもこいつの・・・」 「あんた達が生きていられるのは誰のお陰なのよ!!誰が守ってくれたと思ってるのよ!」 は涙が溢れてきてぽたぽたと流れ続ける 「・・・」 隣にいたキラも押さえていたサイも思わずを見た 「キラが・・・キラがどんなに辛い思いして守ってきてくれたと思ってるのよ!!」 キラの胸が掴まれた もしかして・・・は・・・ そう思ったときキラにも言いようのない気持ちが兵士に対して生まれた を押さえていたサイも同様に兵士を睨みつける 「少佐!早くそいつを黙らせてください!!」 「それをこっちから頼んだわけじゃない!なんて平然といえるの!!」 調子のいいときだけ弱いもの気取りで!!都合が悪くなったら全部強い人のせいにして!!」 (・・・なるほどね) まさか、ここまできてアルテミスの状況がまたくるとはね フラガは顔を歪める 「お前らは嬢ちゃんがいきなり殴ってきたっていうんだな」 「はい」 状況がこちらに向いてきていると思った兵士の顔はぱっと明るくなる 「・・・ふ〜ん」 「やだ、サイ放して!放してよ!!あいつらみたいなのが・・・ あんたたちみたいなやつがこの戦争を終わらせないんでしょ!!」 「全くもって俺もそう思うよ」 そう言ってフラガは兵士に近づくと一発づつ殴った 床に叩きつけられた兵士達は状況が掴めず目をしぱしぱさせている 驚いているのは兵士達だけでなくとキラたちも一緒だった 兵士達に踵を返すとの方へよってくる 「可哀想に女の子の顔殴るなんてな」 にっこり笑ってフラガはの頬に触れた 驚いていたが鈍い痛みに我に返り顔を歪める 「っ!・・・少佐、あたし・・・」 「いいよ、ま、大体は分かったからさ」 「でも・・・すみません」 ぼろぼろとさっきからとまらない涙を流しながらが謝るとフラガはくしゃりと頭をなでた 「さて、坊主、言いたいことがあったら言っていいぞ」 「いいです、今の僕が手を出したら洒落にならなくなりますから」 そうだな、と苦笑いを浮かべながらフラガは肩を竦めた 「さて、そこのナイト諸君は姫君を医務室へ連れて行く!さっさと行った行った」 「あ、はい!」 サイが返事を返す 「・・・でも!!」 そう言ったのはだった 「お前はよく頑張ったから」 そう言ってに耳打ちするとサイとキラの肩を押した 早く連れて行け、と言うように そして左右からキラとサイが肩を抱きながら廊下を後にする 「さてと、問題はこっちだな」 がいなくなったのを確認してからフラガは兵士達のほうを見る 「ありがたく思えよ、左手で殴ってやったんだからな まぁ、お前ら次の機会があったらこの艦を降りることだね ぶっちゃけ、こん後一切お前らの顔も見たくないので 今度俺の前に姿あらわしたらゼロの的にしてやるから 覚えとけよ」 そういって口元だけで笑いながら冷たく言い放った |