数時間後早々と呼び出され 正面にラミアス艦長、右にバジルール中尉、左にフラガ少佐 そうそうたるメンバーに囲まれてあたしの軍事裁判は行われた (一応、志願しちゃったからね・・・仕方ないか) ”捕虜に加えられた暴力行為に対して” 難しい言葉を並べて刑罰を求めるバジルール中尉と 頭をかきながら軍法を捲り自論で戦うフラガ少佐 それを冷静な目で判断していくラミアス艦長 そんななかでもあたしの耳には右から左で あたしの頭には数時間前のミリィ顔と捕虜の少年の顔が交差していた 「上の空ってかんじね。なんだか、あなたらしくないわ」 と困ったように笑ったラミアス艦長の言葉で裁判は終わった あたしに課せられた刑罰は 謹慎でも トイレ掃除でもなく 捕虜の監視、及び世話だった Me too act6 「トイレ掃除でも命じられたか?」 「サイ、それワンパターンだよ」 案の定、扉の前で待っていたサイがお決り文句で近づいてきた 「いや、捕虜を殴った程度で銃殺とかにはならないだろうからさ、和ませようと思って」 「・・・サイはそーゆーキャラじゃないでしょ?」 「あはは、おれも無理したと思ってる」 大げさに肩をすくめたサイには微笑を溢すと歩き出した は珍しくあの軍服を着用している (二度目か・・・) 軍事裁判という畏まった場所に赴くのでやはり正式な格好が必要とされたからだ だからと言ってこのスカートは、やはりありえない は下を見るとスカートから覗く足を見てため息をついた (足、太い・・・) 靴下はふくらはぎ丈の自分のものを履いていたがさすがにあの靴下までは履けないと思っていた 普段から作業着を着ているはそういった類のものを一切持っていない 初めてAAを手伝うと決めたときも一度目の軍事裁判も 「正式な軍人じゃないから」 と言い張って奇妙な組み合わせだがあのピンクの服の下に白いズボンを履いていたのだ しかし今回、正式に軍に志願し軍人として事を犯してしまった 「きちんとした軍服でくるように」 何故かを呼びに来たトノムラが然りと釘を指していった 場に合った格好を求められたは仕方なくミリアリアにスカートを借りてきたのだが その時のミリアリアの表情が少し気になっていた しかし自分もそれどころじゃない (パンツ見えるよ、これ・・・) 歩きながらスカートの丈を気にする (ミリイもフレイもよくこんなのはいてられるよね。 フレイなんてもうあの丈、ギリギリじゃない・・・セクシー路線の女の子はあれでいいのか・・・) 「プッ」 「な、何で笑うのよサイ?!」 思考を読まれたと思ったが慌てて切り返す いつもズボンを履き大またで歩くが 両手でスカートの脇を抑えながら静々歩く姿はサイの目にとても滑稽なものに見えたのだろう 「いや、俺だけいいもんみたなって思っただけ」 「はぁ?」 「そんなの姿見れるなんてさ」 が自分の姿を思い出しかぁっと一気に真っ赤になる 「ああ!もう、煩い!!あたしやらなきゃいけない事があるんだからさっさと行くよ!!」 まだくすくすと笑っているサイを尻目には大股で颯爽と歩き出してしまった 「やること?」 その言葉にサイは笑うのをやめた 振り返ったは苦虫を噛み潰したような顔でこう言い放った 「捕虜の監視と世・話」 とりあえず戻って着替えてから課せられた罰に取り掛かろうとしたは 静寂に包まれた部屋に驚いた (この時間ならミリィいるはずなのに・・・) はミリアリアの姿が見えないことに異様な不安を感じた (・・・なんか嫌な予感がする) 頭を横切る数ヶ月前の生活 あたしたちはこれまでぬくぬくと育ってきた 中立の戦争のない所で 平和な日常 映画やドラマを見るようなモニター越しの戦争 でも 今はそれが 自分たちの身近かな問題で ここのところ繰り返される非日常的な生活 あたしたちは訓練された兵士でもなんでもない 頭はとうにおかしくなっていても変ではない 宇宙での戦い たくさんの人の死 身近な人の死 (・・・トール、キラ) そして ザフト 私たちの敵 トールを殺した憎むべき敵 そこにいるすべてものが敵 倒さなければいけない敵 そこであたしはふと我に返る そんな狂気的な考えが自分の中にあった事にびっくりした 戦争は人を狂わせる 誰かがそんなこと言っていた 殺された人 殺した人 残された人 関わった人の人生や人格、すべてを狂わせる はじめて”戦争が怖い”と上っ面だけではなくそう思った それ以上にそうなってしまった自分自身が怖くなった (でも、あたしだってまたトール達のこと、割り切ってるわけじゃないけど・・・・) まだ整理しきってない今のミリィにちゃんとした判断ができるわけない できるはずがない は途中まで降ろしていた軍服のファスナーをそのままに部屋を駆け出した 頭に浮かんだ捕虜の少年の顔 息を切らせながら小さく舌打ちをする 「こういうときに限ってサイもいないのよっ」 スカートなのも気にせずに艦の中を駆け回る 途中何度かすれ違った兵士たちがの姿に驚いて振り返ったり 仲のよい兵士達が声をかけてきたがには全く聞こえてなかった 「一応、捕虜の監視と言うことなので銃の所持を許可します」 「一介の兵士に銃を持たせるなど!」 「おいおい、俺もそれには反対だな」 「フラガ少佐、バジルール中尉、私は信頼の元に所持を許可するのです」 「ですが!」 「私はあなたにまで何かあって欲しくないの。護身用だと思って、万が一のために」 今になってマリューの言葉が耳をつく 腰にある重みに眉をしかめた (・・・万が一) が次の角を曲がろうとすると パーン と反対方向から銃声が聞こえた (・・・あっちは救護室) は血の気がひき背筋が凍るのが分かった あたしはその音の方向へ走り出すとその嫌な予感が的中しそうで全身が震え上がっていた 一刻も早くそこに行かなくちゃ |