「うわ〜!!このモデルガン格好いい!!」

それはあたしたちがまだヘリオポリスにいたころ

いつだったか忘れたがカズイが持ってきたモデルガンにゼミの男子が盛り上がっていたときのはなし

皆、銃やら何やら攻撃的な物に憧れを抱き目を輝かせていた

キラはあたし達の隣で苦笑いだったけど

ミリィは

「・・・そんな物騒なもの。あたしは嫌い」

と楽しそうに笑っていたトールを見つめながら目を伏せた

あたしもそう思った

わざわざ戦争のない国にいるのにどうして武力に憧れるのだろう

つまんなそうにしていたあたしたちに気付いたトールは

「バーン」

と銃口を向けた

「ちょ、やめてよ!」

「危ないって、トール」

キラもトールをとがめる

「ははは、弾なんか詰まってないよ」

一瞬唖然としてたミリィが声をあげた

「そういう問題じゃないでしょ!!」

ラボ内をミリィに追い掛け回されるトールが笑いながら

「いざとなったらミリィとの二人ぐらい俺が守ってやるよ」

と言った

それがなんでもない言葉だと分かっている

自分を馬鹿だなと思いながらその言葉に胸が熱くなった




もし、あのときの他愛もない約束が守れるなら


お願いトール、ミリィを守って











Me too  act7











角を曲がって救護室のドアが開きっぱなしになっていた

そこで目に入ったのは

銃を持ったフレイと

そのフレイを抑えているミリアリア

二人の体は部屋から少し出て廊下にまで出ていた


その光景に

足がすくんで

ぞくりとした



「何で邪魔すんのよ!!あんただってこいつを殺そうとしたじゃない!!!」



フレイの叫び声が廊下に響き渡る

やっぱり

は唇を噛んだ




「ちょっと、何してんの?」

部屋の中は想像以上の状態だった

電気は先ほどの銃弾が当たったのか割れて床に散らばっていた

ベッドに寝ていた捕虜の少年は額から血を流し

起き上がったミリアリアはへたりこみ何かに怯え振るえている

フレイは涙を流しながらすごい剣幕だ

がいないと探していたサイはすでにここにいた

「・・・

サイがの名前を呼んだ

現状に流されていたは必死で現実に戻ろうとする

「これはどういうこと?」

足元がふら付いたけどあくまで気丈に振舞った

「あたしは悪くない!!あたしは悪くないもの!!!」

フレイは必死になって叫ぶ

「だって、こいつコーディネーターじゃない!パパを殺したんじゃない!!

 あんただって一緒でしょ?あんただって憎くて殺そうとしたんでしょ?」

フレイの目はしっかりとミリアリアを捕らえていた

ミリィがびくりとする

捕虜の少年もぐっと唇を噛んだ

フレイの言葉はそれは決して弁解や言い訳の類ではない

ましては誰かを傷つけようとしているわけでもないとは分かっていた

あえて言うならば「防衛本能」

自分が傷付けられないように自分を守る

自分達以上に温かい環境で育ってきた彼女のおかしくなってしまった心の叫び

フレイが可哀相なのは分かっている

それでもどうしようもなく何かに腹が立った

(分かってる、フレイが悪いわけじゃない。分かってる)

そう言い聞かせ自分を抑えようとする



ふと、気付くと足元に少し血のついたナイフが転がっていた

捕虜の少年の額と交互に見る

(これか)

「・・・あたしが言えた義理じゃないけど捕虜への暴行は禁止されてるのよ」

ぐるりと一周見渡した

は別に誰をとがめたいわけでもない

その言葉は事務的な感覚

この状況下でフレイがやらなくとも誰かがやっていただろう

視線はミリアリアで止まった

「あ・・・たし・・・あたし」

たどたどしい声でミリィが何かを言おうとする

「どうしたのミリィ?」

ティナは屈んでミリィに目線を合わせた

近くに人がいるにもかかわらずミリアリアの視線は見えない何かを見ていた

思わず目を背ける

(やっと、よい兆しが見えていたのに・・・)

そのまま顔を上げサイに問い掛けた

「・・・サイ、これって・・・」

「あたしは違う!!あたしは違うの!!!」

立ち上がってサイに近寄ろうとしたその時、ミリアリアが声をあげた

その声はトールが死んだ時とは全く違う別のもので

少なくともが知っている温厚なミリアリアが発するような声ではなかった

あまりにも悲痛なその叫び声には耳を塞ぎたくなる



残された人の全てを狂わす


それが戦争













駆けつけてきた兵士によって暗黒空間のような状況は終わった

どっと疲れがこみ上げる

サイがフレイとミリアリアをつれて先に部屋へと帰っていった

(あたしもそろそろ・・・ちょっと眠りたいよ)

ドックへ行くことなどこの状況では全くの頭の中から消えていた

がてきぱきと事後処理を行う兵士を横目にその部屋を退室しようとする

後ろから声をかけられた

「君は二等兵だね」

「ハ、ハイ」

振り返るとさきほどから中心になって指示を出した兵士だった

「ラミアス艦長から、捕虜の世話については君に任せていると聞いている」

「は、はぁ・・・」

「それでは、捕虜の手当てを頼んだ」

「?」

の顔に思いっきり?マークが浮かんだ

気付いたのか気付いていないのか兵士は気にせず話を進めた

「銃の携帯はしているな」

「はぁ」

「よし。このくらいの傷なら応急セットで十分だろう

 これを持ってこのまま彼を牢まで連れてってくれ」




今、なんと言いました?






それでは



捕虜の



手当てを



頼む





・・・・・・・・・・?!




視線は手を拘束されたままの捕虜の少年

そちらも視線に気付いたのか顔をこちらに向けた

その時、

血の気が引くときって本当に「サー」っていうんだ

などとくだらない発見をしていた

否、しなければおかしくなりそうだった

嫌な笑いが込み上げてくる




気付けば犬の散歩のように捕虜の少年を連れて歩いていた

決して長い道のりではないが目的地までに誰にも会わないはずがない

すっかり忘れてた自分の格好へのつっこみも飛んでくる

、彼氏かい?スカートまではいちゃって」

「あんまり彼氏をいじめるなよ」

極めつけはマードックで

「その縄はどっちの趣味なんだい?」

だった

(戦争中だってのになんてここは呑気なやつらばかりなのだろう)

真っ赤な顔をしながら心の中で少し観点がずれた所に毒気付いた

(てか、これは・・・ある種のセクハラだ)


声をかけてきた兵士にか

この指示を出したあの兵士か

それとも、大本のラミアス艦長か

は真剣にこれはどこ訴えたらいいのか考えていた












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