映画の中で見た捕虜って・・・なんかこう、ね? 緊張感漂う、なんていうのかな・・・ 実際捕虜ってみんなこんなもんなんですか? よく喋る (たっぷり嫌味っぽく) よく笑う (口のはし上げて嫌な笑い方) しかも気付けばいつの間にかあたしの隣を図々しくも歩いてるし 「あんたみたいな女の子って足つきにどれくらいいるわけ?」 さらに馴れ馴れしいし (女好きかよ、こいつ) こいつをみてるとここ数日のいやな思い出が蘇ってくるのに こんなやつにかまってる間に早くミリィの様子を見に行きたかった 「あれ?」 「・・・何?」 「もしかしてあんた、あの時、俺の事殴った奴?」 あたしは聞きたかった 捕虜の暴行を禁止した人は誰なんですか? (・・・今更、気付いたのかよ) Me too act8 ガッシャン は扉をぶっきらぼうに閉めると手渡されていたメモのロックを打ち込みカードを通す 「わ〜お!随分、古典的な」 (・・・無視だ) 淡々と作業を進めるとすぐに扉のほうへ向かった とりあえず、ここを出たらどこに文句を言いに行こうか考え中だったりする 「ね〜あのさ!!」 緊張感のない声に引き止められる (無視だ) 「ちょっと、あんた聞いてんの??」 (無視だ) 「パンツ見えてるよ」 「!?」 は慌てて後ろを振り返りスカートを抑えた しかし、もともと短いスカートだが見えるところまで上がったりはしていない (騙された!!) は顔がかぁっと熱くなるのが分かった 「ちょっ!あんた、見えてないじゃない!!」 捕虜の少年の顔を見て怒鳴ると少年はにやりと笑って傷を指差す 「あのさ、傷の手当てしてくんないわけ?」 ふふ、一発ぐらいなら許されるかな? はさんざん悩んだ挙句、格子越しに手当てをすることに決めた 牢に入れた時点で手の拘束は解いていたので一応の為に 額の傷に消毒液を染み込ませた脱脂綿を当てる 捕虜の少年は少しだけ顔を顰めた 「ここのやつらって本当に可笑しいよな」 「・・・」 「おいおい、また無視ですか?」 方を上げて首を振ろうとする 動かないでと意味をこめて頭を掴んだ (そうなの、無視してんの。だから話し掛けないでよ) は無言で傷口だけを見て手当てを続けた やっと諦めたのか、それまでの顔に向いていた視線が下ろされる 見ていられてはやりにくいし、気恥ずかしい は胸を撫で下ろした 「あ・・・」 (今度はいったい何よ) 「あんた、ストライプなんだ。白と黒の」 (はいはい、そうよ。今日のあたしは白と黒のストライプのパン・・・) 「わきゃぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁ!!」 「うわっもっと色気のある叫び声出してくんない?」 は思わず叫び声を上げる 少年の視線は下半身にいったままでにたにたしていた 内股で座り込むと少年の顔を押しのける 「ちょちょちょちょちょちょっとあんた、見ないでよ!!!」 「勘違いしないでくれる?あんたが見せたんでしょ?」 「こっちだってこんなスカートなんか履きたくないのよ!!あんたのせいなんだからね!!!」 「俺のせい?何で?」 (事情も知らないで、こいつは・・・) 「あんたを殴ったから艦長に呼び出されて裁判だったの! まったく、じゃなかったらこんなピンクの軍服も着てないし、ましてやスカートなんてもってのほかよ!! これのせいでみんなに冷やかされるし、あんたを紐で引っ張ってたから変な趣味があるとか思われてたし!! しかも、課せられた罰があんたの世話よ!こっちだってやってらんないじゃない!」 一気に怒鳴り散らして肩で息を切らしているに少年は 「すっきりした?」 と笑った。 その笑顔はいつもの皮肉さがあるものではなく年相当の屈託のないもので また何かに妙に引っかかる 「・・・ああ、もう畜生!すっきりしたわよ!!」 「そりゃ、よかった」 はそれ以上何もいえなくなってまた新しい脱脂綿を出すと牢に近寄り治療を再開した (・・・毒気を抜かれた、くそぅ) 何だか悔しかったので脱脂綿を思い切り押し付ける 「いつっ!!」 「あ、ごめん。消毒しなきゃと思って張り切りすぎちゃったわ」 「・・・おいおい、思いっきりわざとだろ、今の」 納得いかないような顔をした少年を無視してガーゼで押さえ、包帯でとめた 最後にポンっとたたく 「っ!」 「ま、こんなもんで平気でしょ?あんた丈夫そうだし」 「コーディネーターだから。とか言わないんだ」 てきぱきと使った道具を片付けはじめる 「なんで?あたしはあんただから、って言ったんだけど?」 「・・・」 そのまま少年は黙ってうつむいてしまった は片付けが終わるとすっくと立ち上がる 「じゃあ、今度は食事のときにでも」 「・・・ッカ・エルスマン」 「はぁ?」 「ディアッカ・エルスマン。俺の名前」 少し照れくさそうに褐色の肌を染めながらそう言った (・・・こいつもしかして、ちょっと可愛い?) 「・・・エロスマン?」 「エルスマンだ!!」 ディアッカが声を上げた。 さっきとは逆の状態には可笑しくてしょうがない 「冗談だって、あたしはでいいわ。じゃね」 そういって再びドアに向かおうとする 「あのさ、・・・」 「・・・何?」 「お前、自分で呼べっていったんだからもっとよい返事しろよ」 「はいはい。で、何のよう?言っとくけどできることとできないことがあるからね」 「あいつ、外跳ねの髪の女さ・・・」 ミリィの顔がすぐに浮かんできた どうしてだろう この数分、あたしは忘れていた この憎しみをやりきれない思いを・・・ また体の奥からふつふつと湧き上がる怒り トールを殺した、みんなをめちゃくちゃにしたコーディネーターの彼へのものなのか 忘れていた自分へのものなのか はぐっと手を握った 「はじめて見たでしょ、あんたたちが殺した人たちの残したものを」 鋭い目でディアッカを見下ろした ディアッカの体に電気のように何かが走る そのままは踵を返すとドアへ向かった 「お前、俺の世話なんだろう?その・・・またくるよな」 弱弱しく呟かれた最後の言葉は届いていたがは何も言わずに扉を閉めた |